教団に内部分裂の動きも

――教団への世間の関心は日に日に低下している中、つい最近、教団内部で大きな動きがあったと聞きました。

有田(以下、同)今年の6月6日に韓国の旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)本部で大規模な組織改編に伴う人事異動が行われたんです。背景にあるのは教団内部での跡目争いだと私は考えています。

教祖の文鮮明氏死去後、妻の韓鶴子氏が総裁として教団を率いてきましたが、その韓氏もすでに80歳を超えて体調も悪く、後継者問題が喫緊の課題として浮上しているんです。

有田芳生氏
有田芳生氏
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――文鮮明氏の死去後、教団内では莫大な富と権力をめぐって文ファミリー内で後継者争いが繰り広げられたと聞きます。最終的には韓氏が独裁体制を固めましたが、それに反発した三男の文顕進氏、四男の文國進氏、七男の文亨進氏らが次々と離反し、それぞれ分派を形成するなど、混乱が続いています。

注目すべきは今回の組織再編で新設され、旧統一教会のすべての組織を統括することになる「天務院」のトップは韓鶴子院長が、副院長兼秘書室長に鄭元周(チョンウォンジュ、女性)が就任したことです。

その下には文ファミリー周辺もおらず、韓鶴子氏を除けば文字通り、鄭元周一人独裁体制が構築されたと言ってもよい。彼女が教団関連のすべての企業、資金、人事を掌握したのです。

鄭元周の実姉は、関連団体のリトルエンジェルス芸術団の前団長、韓国の世界日報社長は実弟、米国のワシントンタイムス社長は義兄ですから、すでに文鮮明ファミリーは実権を持っていません。

こうした文ファミリー外しの動きは日本の旧統一教会内部でも起きているように見えます。近い将来、旧統一教会は文ファミリーのものでなくなる日がやってくるかもしれません。

じつは少数ですが、以前から「韓国の本部から距離を置いて純粋に信仰に生きる独自路線を歩むべきだ」という声は教団内部にあったんです。この8月20日に「懺悔録」を出す大江益夫元広報部長もそう主張していたひとりです。

たしかに独自路線を歩めば、韓国に多額の献金をする必要もなくなり、身丈に合った財政規模で信仰を行うことができる。自主的な独立路線しか健全な教団に再生する道はありません。