裁判長が加害者へ最後にかけた言葉とは
証人尋問には伊藤被告の精神鑑定をした精神科医も出廷。#2の手記で本人が記述しているとおり、伊藤被告は20歳の頃に発達障害の診断を受けている。
精神科医は「知的障害者のIQの基準である70より少し高い85だった。一見、障害があるように思われないが、その他の数値が低く学業や仕事でもミスを繰り返したのだろう」とも話している。
7月18日に行われた判決で裁判長は、これらの伊藤被告の特性や被告をめぐる環境などさまざまな証言を鑑みて、被告人供述を採用。
理由については、被告人が最初にAさんに不信感を抱くきっかけとなった1万5000円について、被告人がAさんに尋ねた際に「言う必要はない」と突き放したことは「不自然だ」とし、犯行当日に被告人がAさんを刺そうかどうか逡巡しているときに(Aさんはこの発言をしたことを否定しているが)「刺すなら刺せよ」と挑発していたなどと述べた。
とはいえ、2回しか会ってない相手に強い殺意を抱き刺したことは「極めて衝動的、短絡的」だとし、「その偏った性格が今回は事件に繋がってしまったが、別の良い何かに繋がれば、いい個性として発揮できる。
自分の個性にとことん向き合い、把握して出てきてほしい。福祉などには躊躇なく頼ること。人の縁に恵まれればいいと裁判所一同で願います」と言葉を添えた。
裁判を傍聴していた小田原在住の60代男性は「女性の不遇な状況とAさんの出来心が相まって起きちゃった事件なんでしょうかねえ」と感想を述べ、取材にあたっていた司法記者は「ちょっと加害者、被害者どちらにも共感しづらい裁判でしたね」とコメントした。
取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班