カルト的な部分も残しつつ、メジャーで受け入れられたい
三宅 ちょっとまずは、私の佐川さん遍歴からお話してもいいですか? 私は昔から佐川さんを知ってるぞっていう古参アピールをしたいんですけど。たしか2017年に『ダムヤーク』(RANGAI文庫)や『サークルクラッシャー麻紀』(電子書籍)を出されて……。
佐川 そんなところから読んでくださってるんですか!?
三宅 そうなんですよ。三宅のコンプレックスをここでお話すると、私は書評の世界でデビューしたわりに業界ウケしないところがあるよなと自分で思っておりまして。SNSだと読者がいる感覚はあるんですけど、業界編集者からはそんなに褒められない……みたいな。
佐川 ウソ? 業界ウケしてないんですか?
三宅 ウケてないんですよ。その一方で、佐川さんはちゃんと業界でカルト的人気を集めてメジャーデビューされて、文芸界に名乗りをあげて、いつかは芥川賞を獲るのであろうという期待を背負って……という感じじゃないですか。やっぱりそれは文芸的な書き手のあるべき姿だよなといつも感じますし、というか素直に「マジでうらやましい、マジでいいなあ佐川さんすごいなあ」と日々思っておりました。
佐川 芥川賞はあれですけど、そんな……。新刊が13万部も出ている方なのにコンプレックスもなにも。今回の対談だって、「なんで受けてもらえたんやろ?」と思ってたんですよ。
三宅 いやいや、こちらも読んでいただけるだけでうれしいのに、対談の話まで来てびっくりですよ。佐川さんは京大文学部の星じゃないですか。私も京大文学部なんですが。
佐川 いやいや、宮島未奈さん(『成瀬は天下を取りにいく』著者、京都大学文学部卒)にもう太刀打ちできないですよ。宮島さんは僕がやりたかったこと全部やってますからね。森見登美彦さんと対談したり、本屋大賞も獲ったり……。
僕は滋賀県出身なんで滋賀の話をちょこちょこ書いて媚びを売ったりしたんですけど、気づいてもらえず……(笑)。もう今、滋賀県は『成瀬』だらけですからね。僕もちょっと買いたいんですけど、どうしても買えないんですよ、実はまだ。
三宅 そうなんですか(笑)。でも、そういうコンプレックスを言ってもカッコいいタイプの作家さんじゃないですか、佐川さんは! そういうところも羨ましさがあるんですよ!
佐川 いやいや、僕は三宅さんのほうが羨ましいですよ。なんかカルト的なものへの憧れがあるんですか?
三宅 同業者や編集者に褒められたい、でも褒められない! という気持ちを抱えながら日々生きているので……(笑)
佐川 まあ、それも最初は楽しいですけど、劇場でだけ知られてる地下芸人みたいな感じで(笑)。やっぱりもっと売れたいなっていうのは出てきますよね。
(担当)編集者の方もブレイクさせたいと思ってくれているのを感じますし、期待に応えたいと思いながら書きはするんですけど、やっぱり数万部とかはまだいけてないので。そういうところの間でちょっと悩んだりはしますよね。カルト的な部分も残しつつ、メジャーで受け入れられたい、みたいな。