4回目のパラリンピックでローランギャロスへ
「テニスプレイヤーとして、グランドスラムもパラリンピックもどちらも大事です。でも他の競技の選手と触れ合ったりできるパラリンピックには特別感がありますね。」パリ大会は有観客。パラリンピック本来の姿に戻ることが期待される。「4回目の大会なので、リラックスして臨めそうです。気負わずに普段のツアーに近い感じで迎えられる気がします」。競技場が、慣れ親しんだローランギャロスであることは、上地には利点だという。「この赤土のコートは、ハードコートと比べてボールのスピードが遅くなり、ラリーが続きやすいんです。パワー以外に、技術や戦術が重要となり、私にとってはプレーしやすくて楽しみです。」
ロンドン大会から着実に成績を伸ばし、東京大会では銀メダルだった。「あともう一つ金が残っているだけなので、それを取りに行く。」この気持ちは強い。しかし同時に、今は勝つことだけが目標ではないという。
「テニスの技術が向上することが純粋に楽しいんです。成長する過程がすごく充実していて、もっともっと上達していける感覚をもっています。」パリまでは残りわずか。「しっかりと順序立てた準備をすれば、必ず良い結果をたぐり寄せられると思います。」
「満足した試合は1回もない」勝ち試合にも悔しさが
「テニスをやめたいと思ったことは一度もないですね。負けて悔しいとか、思ったようにできなくてモヤモヤするとかは、もちろんあります。でもそれは、もっと練習したい気持ちにつながるんです。」この気持ちは勝ったときも同じだという。「勝っても、内容に満足できないことは、むしろ負けたときよりも多いくらい。もっとこうしたら、ああしたら、と課題はどんどん出てきます。」常に次の試合に向けて改善しようと追求しているため、モチベーションが下がることはないという。
「今日の試合はよかったと思うことはあります。でも今まで100%の試合はないです。1回もありません。」永遠の学びと向上心で、理想の試合への道を切り拓く。上地はこれからも決して止まらない。
取材・撮影/越智貴雄