過激だったと思われがちな初期『サザエさん』
「『サザエさん』が放送スタートしてからの1年くらいは、ハチャメチャなコメディータッチの演出が主でした。しかし、『雨よふってェー』がオンエアされた1973年頃にもなると、だいぶ今とテイストが近くなっています。なので、特段、過激なものを避けようと思って選んだわけではありません。
カツオなどに比べると珍しい、ワカメちゃんがメインの『雨よふってェー』を選んだ理由は、今年の3月24日まで長谷川町子記念館で、ワカメちゃんの企画展をやっていた流れもありますね」
昭和時代の話はハチャメチャだと思われがちな『サザエさん』だったが、実は1970年代からすでに今のテイストに落ち着いていたという。昭和と今とでは、アニメの作り方に違いはないのだろうか。
「原作を1話につき1回使うというルールは今も昔も変わらないのですが、時代的に難しい表現だったり、昔の時事ネタを使った原作は使わない方向になっています。ただ、アニメの話を作る際は、時代性よりも普遍性のあるものを作ろうと意識し続けているので、そんなに変わっていないかなとは思います」
とはいえ、作品の時代設定が昭和でありながら、コンプライアンスがガチガチな令和の今にオンエアすることの苦労は想像に難くない。時代に合わせるため、令和の価値観を取り入れることなどは考えているのか。
「特別なことは考えていないのですが、例えば、カツオが押し入れに入れられたりなどは、あまり今の時勢では好ましくないと思うので、そういったことは描かないようになってきています。ただ、ふだんからあれやっちゃダメ、これやっちゃダメと考えるのではなく、今の我々の感覚として、『これをやったらおもしろいよね』という作り方をしています。その結果として、当時と変わってきていることはあるかもしれませんね」