「親の権利」から「子の利益」へと進む世界の潮流
では、なぜ「共同親権は海外で一般的」という誤った認識が日本で広まったのか。大きな原因は、離婚後に両親が共有する概念の範囲が欧米では時代とともに「親の権利」から「子の利益」へと進化したことにある。概念の進化を4段階で整理すると以下のようになる。
親権(Parental Authority):日本で共有の議論対象となっている概念に相当。この概念にとどまる日本は欧米から見れば遅れている
↓
監護(Joint Custody):親の「権利」ではなく、子供を守る意味合いを強化した概念
↓
責任(Shared Parental Responsibility):「監護」では立場が強い親が立場が弱い子を守る考え方のため、親の「責任」の意味合いを強化した概念。あくまでも権利ではなく、責任をシェアする考え方。
↓
養育(Parenting):「責任」よりもさらに中立的な概念
要するに、日本はいまだに「親の権利」を強く意識した「親権」の共有を議論しているのだ。一方、欧米を始めとする諸外国では「子の利益」を尊重する方向で共有すべき概念が「監護」→「責任」→「養育」へと進化している。「共同親権は海外で一般的」という認識は、こうした潮流の変化を見落としたことによる誤解といえる。(*詳細は筆者のtheLetter「共同親権・面会交流に潜むミスリード」(2024年3月3日) 参照)
文/犬飼淳