「急迫の事情」「日常行為」「重大な影響」とは?
離婚後の両親が共に親権を持つ、共同親権。
改正案は先月に衆議院を通過し、参議院で参考人質疑が始まっているものの、いまだ不透明なところも多く、実質的な離婚禁止制度になる不安はまったく払拭されていない。その中でも重要な論点となっている「別居親の同意が必要となる場面」について、過去記事に続いてさらに掘り下げたい。
具体的には、直近(2024年3月〜4月)の国会での政府答弁に忠実に基づいて、同意が「必要な範囲」と「不要な範囲」を場面ごと(教育・医療・転居)に明らかにする。
別居親の同意が「必要な範囲」と「不要な範囲」を理解するには、まず以下4つの概念を整理する必要がある。
A:子に関するすべての事項
B:子の利益のため急迫の事情がある時
C:監護と教育に関する日常行為
D:子に重大な影響を与える行為
まず、共同親権を含む民法改正案の条文では大原則として、「子に関するすべての事項」(以降「A」)は別居親の同意が必要になる。「すべて」という言葉が示す通り、その範囲は極めて広い。ただし、例外として「子の利益のため急迫の事情がある時」(以降「B」)と「監護と教育に関する日常行為」(以降「C」)は別居親の同意は不要。しかし、厄介なことに日常行為であっても「子に重大な影響を与える行為」(以降「D」)は、やはり別居親の同意が必要となる。