「2人で決められる」に潜む落とし穴
離婚後の両親が共に親権を持つ、共同親権。本記事では、重要な論点となっている「別居親の同意が必要となる場面」を掘り下げて、共同親権導入後に何が起きるのかを考えたい。
まず、共同親権を推進する主張には、「共同親権を導入すれば、離婚後も別居親が子どもに関する意思決定に関与できるので子どものためになる」という内容が見られる。しかし、現行の法制度においても、いわゆる高葛藤でない(=両親が対等に話し合える)場合、必要に応じて別居親も離婚後に子育てに関与できている。
(*高葛藤事案:DV、ハラスメント、虐待など双方に争いがある事案。経済的DVや心理的ハラスメントは加害側に自覚がない場合がある)
一方、高葛藤な場合、現行の法制度であれば同居親が子どもについて単独決定できているが、共同親権導入後は相手と対等に話し合える関係ではないにもかかわらず、互いの意見を擦り合わせる必要が生じ、必然的に揉める場面が増える。
つまり、揉めるかどうかをわける上で重要なのは「共同親権か否か」ではなく「高葛藤か否か(=両親が対等に話し合える関係か)」である。本質と無関係な共同親権を導入したところで、改善するケースは特にない一方で、高葛藤なケースでは状況がむしろ悪化する。
この悪化するケースである「高葛藤な場合」×「離婚後は共同親権」は非常に重要なため、具体的に何が起きるのかをさらに掘り下げていく。
「高葛藤な場合」×「離婚後は共同親権」の子どもに関する意思決定について、推進派と反対派の主張には大きなギャップがある。
推進派は、「離婚後も両親が子どもに関する意思決定に関与できる」ことのメリットを強調するが、そこには以下2つの前提があることが忘れられていることを指摘する。
・高葛藤なため同居親と別居親が対等に話し合える関係ではない
・同居親が単独決定可能な範囲(急迫の事情がある場合、監護・教育に関する日常の行為)が条文ではあえて曖昧に記載されている
さらに、両親がそれぞれ意思決定できるということは、双方の意見が対立したままの場合、いつまで経っても意思決定できない状況が頻繁に発生することを意味する。具体的には次のようなケースが想定される。