「森氏の関与を暴露するのでは」戦々恐々の自民党

一連の混乱の背景には何があるのか。自民党関係者が語る。

「下村氏は政倫審への出席の意向を示すことで、一定の説明責任を果たす姿勢を見せたかった。ですが、下村氏と犬猿の仲である森喜朗元首相の裏金問題への関与について発言してしまうのでは、という懸念が党内で強まりました」

下村氏と森氏をめぐっては、下村氏が文科相、森氏が東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長を務めていた際に、新国立競技場の建設見直しなどで森氏が自身の顔を「つぶされた」形となったことが、その後の対立の大きなきっかけだったとされる。

森氏の“下村氏嫌い”は今も続いており、森氏は安倍派の新体制決めをめぐって塩谷氏の座長就任が固まった直後も、北國新聞の取材に「ようやく石段を一つ上がった。下村さんを外したという大きな一段だ」と発言するなど、下村氏嫌いを公言していた。

“下村氏嫌い”を公言する森元首相(首相官邸ホームページより)
“下村氏嫌い”を公言する森元首相(首相官邸ホームページより)

「それだけに、安倍派が解散することとなり、派内での人間関係を気にしなくてよくなった下村氏が、『復讐』のように政倫審で森氏の裏金問題への関与を暴露するのではないか、との観測も強まっていました。

現在は介護施設に入居しているとされる森氏ですが、茂木敏充幹事長が裏金問題で安倍派幹部を処分しようとした際には、茂木氏に猛抗議するなど、今も発言権は絶大。今回も、下村氏の出席の阻止に自ら動いたとの見方も出ています」(自民党関係者)

すでに開催された政倫審では、野党の追及の矛先は出席していない森氏にも向かっていたが、松野博一前官房長官が「森先生の関与があったとの指摘も出ていない」と述べるなど、政倫審に出席した幹部は軒並み、森氏の関与を明言しなかった。

1998~2006年の間に計7年間ほど会長を務めていた森氏をめぐっては、20年以上前に始まったとされる裏金づくりの経緯を知っているのではとの見方も強いが、松野氏らは軒並み、森氏を守った形だ。

「森氏は安倍氏亡き後、下村氏と同じベテランの塩谷氏を座長とする案を発案し、松野氏や西村氏ら5人衆は、その意を受けて『下村外し』をしつつ、塩谷氏とは協力体制を築いてきました。森氏あっての5人衆、塩谷氏ですから、政倫審に出席した塩谷氏や松野氏、西村氏らが森氏をかばったのは当然ともいえます」(全国紙政治部記者)