「レトロ」路線CM×大写しの若手女優ポスターが思わぬヒットを作った
ちなみに、この「レトロ」路線だが、思わぬ副産物を産んだ。
山口によれば、90年代は女優の顔を大きく写したポスターが流行し、「JR SKISKI」のポスターでもそれが大きく意識された。このポスタービジュアルが、その人気に拍車をかけることとなり、「本田翼さんの真似をして雪山で寝そべって撮った写真をSNSにアップしてくれる人もいた」という。
女優の顔こそ大写しになっているが、実はこの女優たちの構図は、意外にも一般の人たちでも真似しやすく、ポスターと似たような状況の写真を撮ることが簡単にできる。ゲレンデで実際に真似したことがある人も多いだろう。ポスターの構図を人々が真似してSNSに投稿することによって、その人気が広がっていった。
「JR SKISKI」は今後も時代の感性を拾い続けることができるか
「JR SKISKI」のCMは、コロナ禍以降もなお年々進化していて、近年のバージョンでは、TikTokの画面に合わせて縦型画面での広告展開を行ったことも話題となった。
ただ、個人的に言えば、2012年の再開から数年間の鮮烈さに比べると、近年はややインパクトに欠けるというのが正直な感想でもある(特に今年のキャッチフレーズ「雪よ、推してくれ」は「推し」という流行りの単語を使いたかっただけのコピーに思える……)。
思えば、2012年の再開時には、「1990年代を参照する」ということで、これまでにはない発想のジャンプが行われていた。しかし、2013年以後は、基本的に2012年の路線を引き継ぐ形でCMが作り続けられている。
「JR SKISKI」が再度、インパクトのある広告を作るためには、また別のジャンプが必要になるのかもしれない。そうでなければ、消費者は飽きてしまうだけだ。いつの時代も優れた広告は、その時代にマッチした人々の感性を反映させる。「JR SKISKI」は、今後も人々の感性に訴えかけるCMを作り続けることができるのか。
文/谷頭和希