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幸福度世界上位の国では通知表をつけない

「趣味は?」

こう聞かれると僕は、真っ先に「勉強」と答えている。そう答えると日本では、とても珍しがられるかもしれない。

だけど僕がヨーロッパで学生をやっていた時は、少なくとも周りに勉強を楽しんでいる人がたくさんいた。

「なぜ日本の人は、こんなに勉強嫌いの人が多いんだろう」

その理由をずっと考えていた時のことだ。ある中学2年生の日本人の女の子がこんな話を聞かせてくれた。

なんでも「減点方式」の日本型教育への疑問…幸福度の高いデンマークが子どもに通知表をつけない理由_1
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彼女は、クラスで2番目に成績が良く、勉強が大好きだったそうだ。しかし、環境が変わり、周りに勉強が得意な人ばかりになった時のこと、たちまち彼女の成績の順位は下から数えたほうが早くなったのだとか。

その途端、彼女は勉強が嫌いになったというのだ。

もちろん、勉強そのものの中身が変わったわけでも、彼女の理解度が変わったわけでもない。
変わったことと言えば、人と比べた時の成績の順位だけ。僕はなんだか日本人が勉強を嫌う理由が分かった気がした。

勉強そのものが好きとか嫌いとかの前に、それによって「点数」という数字をつけられ、他の人と比べられるのが日本。この仕組みを敷く以上、成績が上位の人以外は勉強が嫌いになる。

……そんな仮説が立てられるのである。

そう考えると、ひとつ納得できることがある。

デンマークでは、子どもにテストや通知表で点数をつけることが禁止されているそうだ。そして、そんなデンマークでは、勉強が好きな子どもが多いと言われている。

ひょっとしたら、幸福度ランキングで頻繁に上位になることにも、このことが影響しているのかもしれないとすら思う。

こんなことを言うと「いやいや、成績は数値化することで競争意識が生まれ、学力を伸ばすことができるんですよ」といった反論があるかもしれない。

しかし、そんな発言を一刀両断するように、国際学力調査でもデンマークは世界トップクラスという結果が出ている。

「好きこそ物の上手なれ」という言葉があるが、まさにその言葉が現実になった良い例ではないだろうか。