慎重に精査したいSNSの情報

まず、渋滞と関連づけた被災地入りの自粛要請を初めて確認できるのは、意外と早く地震翌日にあたる1月2日。発信したのは石川県でも政府でもないアカウントであった。

さらに、翌3日には渋滞の原因は物資を載せた一般車と断定する内容までポストされている。一方、行政機関や政府関係者が渋滞に初めて言及するのは、翌4日の岸田総理が初めてであった。

岸田文雄総理@ kishida230(1月4日12:47)
〈現在、限られた輸送ルートに一般の車両が殺到し深刻な渋滞が発生しています。
被災地へ速やかに必要な物資が届けられるよう、できる限り利用を抑制していただくことについて、国民の皆様のご理解とご協力をお願いします。」〉

能登半島地震ボランティア不足の背景…被災地入り自粛ムードの一因となったSNSアカウントの怪_2

地元の行政機関である石川県は、岸田首相がポストした翌5日に初めて渋滞について言及している。「渋滞で大変困っています」とストレートに表現しているものの、原因までは言及していない。

これ以降には行政機関(石川県、国交省等)が渋滞の原因まで断定した投稿は確認できない。強いて言えば、政権 に対し是々非々で 中立 な立場を取る「ゆ党」と揶揄される維新の国会議員が渋滞原因を「個人が支援物資を積んだ車両」とポストしている程度だった。

日本維新の会 音喜多駿 参議院議員@otokit(1月5日 20:51)
〈石川県内のボランティア募集はまだ行われておらず(加賀市の市民のみ募集中)、電話で問い合わせをすることも現地の負担となります。また、個人が支援物資を積んだ車両が激しい渋滞の原因になっています。せっかくの善意がマイナスにならないよう、皆様のご協力をお願い致します。支援は長期戦です。〉

能登半島地震の直後には、身元のわからないSNSによる投稿による不確かな情報に対しては、引用やリプライでも多くの疑問の声が寄せられていた。

最後に付け加えると、渋滞の実態(原因、場所)に疑問を抱いた筆者は、渋滞について情報発信した各行政機関(石川県、国交省、首相官邸等)に対して根拠となる定量データを1月中旬から開示請求していた。しかし、その大半は「不存在」等を理由に不開示決定となった。

つまり、渋滞が発生していると発信した行政機関ですら、その根拠を定量的に示せない有様なのだ。

(*国土交通省のみは60日の延長決定となり正式な開示決定は3月中旬の見込みだが、根拠となる定量データを持ち合わせていないことは担当職員に電話で確認済み)

取材・文/犬飼淳