本来は「必要緊急」なボランティア

こうした対象の混同によるSNSが、交通アクセスの問題は特に抱えていなかった能登半島以外の被災地にもボランティアが行きにくくなり、マンパワー不足に陥った上、被害が比較的軽微で通常営業可能な観光地(金沢市、加賀市等)で客足が落ちてしまうなど、地域経済にも深刻な悪影響を及ぼしたのではないかと筆者は考える。

次に、ボランティア自粛ムードの一因と考えられる「What(被災地入りを自粛すべき用件)」を混同したSNSのポストを紹介する。

行政機関は「不要不急の用事」と明記して情報発信していたが、これを引用した者たちは「必要緊急の用事」であるボランティアも含む、と読み取れるように対象を真逆にすり替えた上で拡散していた。最も象徴的なのが、この投稿だ。

立憲民主党 塩村文夏 参議院議員@shiomura(1月7日18:11)
〈石川県が「絶対に」と言っています。これまでの渋滞に加えて、積雪も加わります。絶対に不要不急の移動(ボランティア等)はやめましょう!〉

石川県は控えるべき対象を「不要不急の移動」と明記したにもかかわらず、塩村文夏議員は、本来は必要緊急な「ボランティア等」をわざわざ不要不急の移動の唯一の例として追記後に拡散。罪深い混同といえる。

残り4点(When、Who、Why、How)についても類似の手法によって、情報の信頼性は担保しつつ対象を混同させ、被災地入り自粛ムードが醸成されていった。(*5W1Hで対象を混同させつつ被災地入り自粛要請に加担した62アカウントの計107ポストを定量的に検証した結果は筆者のtheLetter「能登半島地震 被災地入りを拒む主張の記録」(2024年1月23日)参照)

被災地入りを拒む主張に該当する計107ポストを筆者が分類したところ、実に7割以上は渋滞に関連する内容で、おおむね「渋滞によって緊急車両が通れなくなり、届いたはずの物資が届かなくなったり、助かったはずの命が助からなくなる」という主旨だった。

写真/Shutterstock
写真/Shutterstock
すべての画像を見る

この渋滞の原因が「交通量」であれば、確かに車が増えれば渋滞悪化と直結しただろう。しかし、原因が「道路状況の悪さ」であれば必ずしも直結はしない。したがって、渋滞の原因は被災地入り自粛要請の妥当性を判断する上で非常に重要だが、この点についても奇妙なことが起きていた。