本記事は2月16日に逝去した叶井俊太郎氏(享年56)の仕事を偲んで再編集・再掲載する。(初公開日:2023年10月29日。記事は公開日の状況。ご注意ください)
「僕もうすぐ死ぬんで、お願いします!」
叶井 今回、最初に鈴木敏夫さんに来てもらったのは、やっぱり日本の映画界でいちばん名前のあるプロデューサーだからね。そんな鈴木さんと、オレは実は知り合いだったんですと。まったく相反する性格だけど、うまくやってるんですというね。まあ、オレが勝手に思い込んでるだけだけど。やっぱり巨匠だし、近寄りがたい雰囲気を持ってる人ではあるよ。いつもオレが一方的にLINEして、ダメ出しばっかされるっていう関係だよね。
――2002年日本公開の映画『ダーク・ブルー』をきっかけに、お二人の縁ができたと聞いています。叶井さんが買い付けた同作が戦闘機乗りの映画ということで、宮崎駿監督にコメントをもらおうと連絡をしてみたところ興味を持ってもらい、結果的に「ジブリCINEMAライブラリー」レーベル第1作目となったそうですね。そのあたりの経緯をぜひ伺いたいのですが……。
鈴木 何がきっかけで会ったかなんて、欄外にでもちょっと入れておけばいいんですよ! 無理やり話したってどうせ覚えてないんだもん。
叶井 出会ったのは、もう20年も前ですよね。
鈴木 そんなにたつんだ。それよりもっと面白い話にならないと。だって叶井、死んじゃうんだよ?
叶井 あははは。それより、このあいだは『プー あくまのくまさん』(2023)にコメントいただいて、ありがとうございました。おかげさまで興行収入1億2000万円くらいになってます。ホラーで1億円突破って、あんまりないですよ。
鈴木 本当! すごいね。僕が寄せた「こんなプーさん、見たくなかった。」ってコメント、良かったでしょ。
叶井 鈴木さんのその一言が効きました。この10数年、何度もコメントお願いしていたけど一度もコメントくれなかったじゃないですか。「忙しいからごめん」って。
鈴木 そうだっけ。考えるのが結構、大変なんだよ。
叶井 知ってますよ。今回は「僕もうすぐ死ぬんで、お願いします!」って言ったら「しょうがねぇなぁ」って書いてくれて。オレの遺作に鈴木さんのコメントが入ってるなんて、うれしいですよ。
鈴木 そうだよ、死を盾にとって……。そう言われたらねぇ。だから真面目に考えて一生懸命協力したんです。この対談企画だって、僕は面白がれないよ。でも引き受けた理由はただひとつ、罰が当たるといけないと思って。