「ラファから退避勧告されても、もう行くところがない」
医療体制や衣食住は不十分にもかかわらず、攻撃から逃げるためにガザの各地からラファに避難する人は増えている。多くの避難民が集まるラファで地上攻撃が展開された場合、これまで以上の死傷者が出かねない。「多くの人々が戦火にさらされることになり、想像を絶する結果を引き起こすでしょう」と山田さんも危惧する。
「すでにイスラエルによるガザ地区全域の非人道的な完全包囲により、ガザの人々は食料、水、シェルター、燃料、電気、医療といった必要不可欠なものを奪われています。仮にラファからの退避を促されたところで、もう行くところはありません。北部から避難してきた人が再びラファから北部へ戻ったとしても、帰れる家もなく、食料や水、医薬品にもアクセスできません」
ラファが本格的に攻撃された場合、生活できずに命を落とす人も甚大な数にのぼるだろう。そうした危機的な状況で、遠く離れた日本の地からできることは何かあるのだろうか。
「『報道がなくなったから解決しているわけではない』ということを心にとめていただければと思います」
今、世界中でパレスチナへの無差別攻撃に対する抗議デモが行なわれているが、日本でも全国各地でデモ活動が行なわれている。メディアでの報道が少なくなるなか、一刻を争うガザ地区について、山田さんはこう私たちに訴える。
「報道で情報を得るだけではなく、国境なき医師団を含め、現地の状況を発信しているガザで活動する団体もあります。そういった情報発信も参考にしてもらい、世界で起きている人道危機に関心を持ち続けてもらえるとうれしいです。
そして、イスラエルの侵攻を止めるために、国境なき医師団では、持続的かつ即時の停戦を訴え続けています。日本を含めた各国の政府には、持続的な停戦を推進するためのあらゆる影響力を行使していただきたいです。そのためにも、メディアの方々には報道を続けて協力してもらえればと思います」
パレスチナで今起きていることに関心を持ち続けることが、私たちにできるアクションなのかもしれない。
取材・文/望月悠木
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