公衆トイレで出産した女性も…
しかも、こうした負傷者や病人を受け入れるはずの医療機関が、非常に厳しい状況となっている。
「紛争下であっても保護されるはずの医療施設、患者、医療スタッフも攻撃を受けています。国境なき医師団が支援する医療施設でもたびたび退避命令が出されるなど、ガザの負傷者や患者にとって医療支援のアクセスは容易ではありません。
WHOによると、ガザにある36か所の医療施設のうち、部分的に機能しているのは15か所。そのほとんどが南部に位置しており、南部への攻撃が激化した場合、医療施設での診察が困難になります」(山田さん)
攻撃による負傷だけではなく疾患に悩まされる人も少なくない。しかし、医療サポートを受けることは困難であり、現地がいかに凄惨な状況であるかがうかがえる。なかでも、イスラエルが地上作戦の対象として挙げたガザ地区南部・ラファの状況は深刻だ。
もともとガザ地区では220万人ほどが暮らしていたが、北部が攻撃されたことで多くの人が南部に避難した。100万人以上がラファに来ざるを得ない状況で、すべての人が安全に生活できる住環境は整備されておらず、「多くの人がテントや簡易的な建物で暮らしている」と山田さんはいう。
「ラファでは水や食料、トイレなどの衛生設備、医療へのアクセスはほとんどないのですが、他に行く場所の選択肢がありません。しかし、同じくガザ地区南部ハンユニスでも激しい戦闘が続いており、ラファへの人の流入は止まりません」
ラファへの避難民が増えれば、ますます生活が困難になる。とりわけ、医療サポートが受けにくくなることは重大な問題だが、すでにその予想は現実のものとなっているという。
「ラファでは妊産婦の医療ニーズに対応している病院は1か所しかなく、分娩の対応数は紛争激化前の3倍に急増。受け入れ能力が追い付かず、命に関わる緊急の分娩にしか対応できない状況となっています」
続けて、分娩室が満室のために医療サポートを受けられず、公衆トイレで出産した女性もいたと話した。