優しい人への配達は後回し
なぜCDでこのようなトラブルが相次いでいるのか。前出のセンター長が言う。
「CDの同僚の話では荷物が多すぎるから時間指定を無視し、担当エリアを一筆書きのように回るしかないドライバーもいるようで、『あまりにも仕事が辛すぎる』と嘆いていました」
また、本社から辞令が下りて都内でCDとして働くようになった正社員のドライバーは怒りをにじませながら説明する。
「CDは配送エリアがとにかく広いから、時間指定を気にしていたら荷物を配り終えることができない。もともとヤマトは各地にセンターを構えていて、ドライバーひとりあたりの担当区域が狭いので、クール(宅急便)の時間指定にも対応できました。
それが分業制となり、クール専門となったことでCDはひとりで3〜4センターのエリアを担当しなきゃいけなくなった。範囲が広がればそれだけ荷物の数は増えるし、担当区域の端と端で、同じ時間指定を希望するお客さんも出てくる。
おまけに都内23区は、パーキングエリアにトラックを停めて台車で配達しないといけない場所が多い。なので、現場では『C表』が出まくってるんです」
C表とは時間指定の荷物を時間外に配達してしまった際に記録されるもので、多発すれば給料にも響いてしまう。このドライバーも当初は遅配をして届け先から怒鳴られる日々だったという。
「個人のお客さんから怒鳴られるのはもちろん、飲食店向け食材のクールが遅れるとランチ営業に支障をきたしかねない。飲食店のオーナーに『なんで遅れるの? 本当に困るんだけど!』と店前で詰められたこともありました。
だからCDたちは配達遅延にうるさいお客さんの時間指定だけは守り、優しい人は後回しにしてごまかしながら回っているのが現状。実際、私も午前指定が重なる日は、優しい人の家に午後3時に配ったこともありました……」
さらに、少しでも効率的に回れるようにと、荷物の「玄関先放置」をしてしまうこともあるという。これは「時間指定無視」「対応悪し」と並ぶ“ヤマトの三悪”のひとつと言われている。
「飲食店のシャッターが開く前に、軒先にクールを置いて配完(配達完了)にしてしまうドライバーもいるそうです」(同)
置き配に関しても編集部に情報が寄せられており、「勝手にクール宅急便が置き配されていて、中身が溶けていた」(新宿区・50代女性)、「エントランス外の駐車場にクール宅急便がしょっちゅう放置されていて、利用者はドライバーに文句を言うと『センターが集約化されて、朝から夜までの配達分を持ってくる必要があるのでしかたない』と返された」(都内23区・性別不明)という状況のようだ。