「”何でここにいるの?”というのが率直な感想です」

手配容疑の犯行から約49年、突然の桐島の「告白」には捜査関係者も戸惑いを隠せない。偽名で入院していた「桐島」は25日、病院関係者に「俺が最後だから捕まえてくれ」と打ち明けたという。病院から通報を受けた神奈川県警が警視庁に連絡、公安部が大慌てで情報収集に乗り出した。ある捜査関係者の1人は驚きを隠せなかった。

「正直、桐島が神奈川にいるとの情報はまったく掴んでおらず、海外にいるものだと思っていました。恥ずかしながら『何でここにいるの?』というのが率直な感想です。

報道にもありますが、入院している男は桐島しかわからない“秘密の情報”を知っていたり、身体的特徴も矛盾していません。ですが病院で確認した捜査員にも聞いたところ、顔は手配写真とは似ておらず『本当に桐島か?』と首をかしげる捜査員もいます。もちろん書類や身分証のなかに桐島本人につながるものはありませんし、50年近く前の当時のDNAがわかるブツと、彼のDNAが一致するかどうかも現時点では未知数です」

長年、指名手配されていた桐島聡容疑者
長年、指名手配されていた桐島聡容疑者

近年急速に信頼度を高めているDNA鑑定も、あまりの逃亡期間の長さにはお手上げとなる可能性もある。照合資料集めにも時間が必要だ。

「これが冤罪だったら何を言われるかわかりませんし、裏付けには時間がかかる。ましては末期ガン患者ですから、逮捕や起訴、その後に控える裁判のことを考えると、どこまで進めるか、時間との勝負だと思います」

1971年に起きた渋谷暴動事件で警察官を殺害したなどとして翌年に指名手配された中核派の大坂正明被告(74)は、45年間の逃亡の末に2017年に広島市内のアジトで見つかった。大坂被告は昨年12月22日、東京地裁で懲役20年の判決を言い渡されたばかりだ。捜査関係者が続けた。

「大坂を逮捕した際は、実際に手配書を見ていた警察官が活躍しました。今回の『桐島』のケースでも、本人のことを知っている警察官がいるかどうかもカギになると思います。一般論ですが、仮に彼が桐島だとしたら、偽装の保険証で入院していた可能性が高いわけですから、まずは別件で逮捕して、その後に手配容疑の本件で逮捕する流れになるでしょう。ただ、健康状態を考えるとどこまで彼がもってくれるか…」

突然飛び込んだ末期がん患者の衝撃の告白。「桐島」は本当に「さそり」なのか。50年越しの事件解決に向け、タイムリミットまでは残りわずかだ。

※「集英社オンライン」では、今回の事件について情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班