上司や先輩に対する気持ち
上司に対して感謝の声やありがたさを語る一方で、その上司のような姿を目指したいかというとほとんどNOなのは共通点と言えるかもしれない。「上司はありがたいが、ああはなりたくない」、そんな存在がいまの若手の上司観である。若手のロールモデルが不在である、というのはよく語られる話で、それは事実だろう。
筆者は大阪商工会議所で若手社員キャリアデザイン塾の塾長をしているが、社内のロールモデルにインタビューするという課題を(あえて)課した(社外の同世代がいる場で、自社でのキャリア作りの特徴を認識して欲しいという趣旨だ)。課題が終わった後、参加した大手企業から中小企業まで50名の若手に「課題に取り組む前から、社内にロールモデルがいたか」聞いたところ、なんと手が挙がったのはわずか4名だった。さらにはその場でひとりの若手から「ロールモデルを社内に見つけることなんて無意味です。社外につくるべきです」と意見が出た。実話である。
いずれにせよ、月100時間の残業をしていた若手時代を持つ上司、「会社の花見の場所取りが最初の仕事だったんだよ昔は」という先輩の話を聞いて、どうロールモデルにしようというのか。マインドの問題ではなく、もはやルール的に、法律的にそのキャリア形成が不可能なのだから、モデルにしようがない。
ただ、その前提で上司や先輩とどう接点を持つかに注目しよう。「何を言ってもわかりあえない」という若手もいれば、「あ、意外と……」という若手もいるのだ。実際の声として出ていた「あ、意外と上司も迷っているんだ」といった気づきが起こっているとき、背中を見て育つ方式のロールモデルとしての上司―若手の関係から、また違う関係が形成されつつあると感じる。
もちろん、実際にわかりあえない感は高まっているだろう。冒頭で紹介したとおり部下の若手が育っていないと感じる管理職は75%以上に上っているし、このままでは部下の若手が離職してしまうと感じている管理職も65%以上に上っている。
新人時代、若手時代の職場環境が違いすぎるのだから、それは上司側の問題でも若手側の問題でもなく、単なる過ごしてきた環境の違いが、わかりあえなさを生んだに過ぎない。しかしそのなかで、確実に新しい接点の可能性が浮上しているのだ。
文/古屋星斗 写真/Shutterstock