近い将来、「何を食べるか」もChat GPTが決める⁉
その戦時経済は、民主主義の危機をも引き起こす。慢性的な緊急事態に対処するために、より大きな政治権力が要請されるからである。要は政治がトップダウン型に傾いていくのだ。
そんななかで、もし排外主義的なポピュリストが権力を握って、暴走を始めれば、民主主義は失われてしまうだろう。全体主義の到来だ。
こうした最悪の事態を避けるために、トップダウン型とは違う形で、「人新世の複合危機」へと対処する道を見出す必要がある。
そして、それが「自治」という道にほかならない。
もちろん「自治」に希望を見出すことについて、あまりに理想主義だと感じる方もいるだろう。実際、私たちはこの社会のルールや仕組みについて、責任を持って自分たちで決め、運用していると胸を張って言えないはずだ。
日常生活において、自分たちで決められることはとても限られている。自由に決められるのは、コンビニでどのお菓子を買うかとか、休みの日にどこに遊びに行くかを決めることくらいではないか。
その際にも、スマホに表示される商品のレビューやGoogle Mapの指示に従って私たちは行動している。もうあと数年すれば、何を食べるか、休日に何をするかをChat GPTに決めてもらう日が来るかもしれない。
そう、私たちは、自分たちでは何も決めることのできない他律的な存在になっている。日々の生活でもこんな状況なのに、政治や社会についての重大な決定を、私たちが責任を持って行うことなど想像すらできない。それは当然のことだろう。
しかも、競争の激しい自己責任型社会に生きる私たちは、他者と協働して、大きな課題に取り組む力を失いつつある。それよりお金を稼いで、自分たちの個人的な欲求を満たすほうに関心を持つようになっている。
けれども、そうやって「自治」の力が弱まるうちに、一部の政治家や富裕層、そして大企業が自分たちに有利になるルールをつくって、ますます社会を私物化するという悪循環に陥っていないだろうか。