「他人の顔で認証できる」「兄弟の情報が出てきた」

日本医師会は7月の記者会見で、データ紐づけのミスなどにより国民や医療現場に不安と混乱が生じていることについて、長島公之常任理事が「この問題の解決が喫緊の課題であり、現行の健康保険証が廃止される令和6年秋までに万が一体制が整わない場合は、保険証の有効期限延長の要請をし得る」という姿勢を示している。

また、全国保険医団体連合会は12月20日、マイナ保険証の利用を巡る10月1日以降のトラブルの実態調査結果を発表。医療機関のカードリーダーのエラーなどで保険資格確認ができず、「一旦10割負担を患者に請求した」という事例が265医療機関、少なくとも510事例あることがわかった。

そのほかにも、現場の医療機関からは「名前や住所に●(黒丸)が表記される」「顔認証がうまくいかない」「他人の顔で認証できる」「カードリーダーもエラーが多すぎて使いものにならない」「資格喪失している保険証が『有効』となっていた」「兄弟の情報が出てきた」といった声が挙がっている。

河野太郎デジタル大臣は12月12日の会見で、再発防止策の必要を認めたうえで、「いずれマイナンバーカード1枚で、診察券も医療の受給者証もすべて済むということになる」「よりよい医療をDXを通じて提供する体制を整えていきたい」と述べた。

いつまでも従来の保険証のカードを持ち歩き、転職すれば作り直すというのが、時代にそぐわないことは間違いない。便利になることを望まない国民もいないだろう。開始直後からトラブル続出でケチがついてしまった制度だが、今後は足元の揺らぐことがないように期待したいものだ。

文/あまのなお