「上司は部下を理解してくれるもの」は、幻想
「上司と相性が悪くてうまくいかない」
「上司が無能すぎる、もっと優秀な人のもとで仕事がしたい」
「上司が自分のことをわかってくれない」
――これらは私が新入社員の頃、実際に感じていたことだ。私は自分の実力に自信を持つスーパーポジティブなタイプだったが、前項で述べたように、人によっては、「上司と合わなくてつらい」ことが原因で自信をなくしたり、退職を考えたりしている人もいるだろう。
特に若いときは、上司の存在はとても大きい。上司のちょっとした言動により、気持ちや成果は大きく左右されてしまう。上司ガチャでハズレを引いたと感じている人の多くは、「上司なのだから、部下である自分の強みを深く理解して、適切に引き出してほしい」と思っているのだろう。だからこそ、「どうして自分のことをわかってくれないのか」などとモヤモヤしているのではないだろうか。
正直なところ、私もかつては同じように考えていた。けれど、いま振り返ってわかることがある。
それは、「自分の強みを理解して活かしてほしい」と上司に期待しているのであれば、それは決して叶わない、ということだ。
身もフタもないことを言うが、たいていの上司は、部下の強みを深く理解し、適切に引き出せる力なんて持っていない。そもそも上司は忙しく、一人ひとりの部下に目を向ける余裕もない。
だからこそ必要となるのは、「自分のことを理解させる努力」ではなく、「上司の強みを自分から理解して、そこに自分を合わせにいく努力」だと、いまの私は考えている。つまりは、部下のほうが上司をリードするわけだ。
「自分のことをわかってもらう」よりも、このほうがずっと効率的かつ生産的であり、結果としてはるかにたやすく能力を開花させることができるのではないだろうか?
ひと口に上司と言っても、いろいろなタイプの人がいる。もしも「上司と相性が悪い」「上司と合わない」と考えているのであれば、まずは自分の上司がどんなタイプでどんな人間なのか、その上司を冷静に観察してみることをおすすめしたい。上司の強みと弱みを深く理解すれば、上司の強みの活かし方がわかるし、部下として弱みを補完してあげることもできる。
「自分の強みを理解してくれ」「自分を活かしてくれ」という受け身の姿勢は捨てて、積極的に上司を利用するという姿勢にシフトチェンジするのだ。
そもそも、黙っていても自分の強みを理解して活かしてくれる上司なんてまずいない。上司は、上司としての自分自身の評価につながることしかしないものだからだ。
だから部下としてはまず、上司に貢献するという姿勢が必要だ。「私の強みを理解して、活かしてほしい」ではなくて、「上司に貢献したい」と考えて行動できるようになってほしい。
こう言うと「どうして部下である自分が、そこまでしなければいけないのか」という声も出るかもしれない。
だが、これも残酷な事実だが、よっぽど優秀な上司でない限り、そこまで上司に期待するだけムダなのだ。