梅毒で脳が冒される脳梅毒の恐怖
――そして、次のケース「精神疾患としての梅毒」では脳梅を取り上げています。
梅毒に関しては、最近になっていろいろな啓発記事が出てますけど、私からみて一番怖い部分が世に出てなかったんですね。この『脳にくる』というのは伝えなきゃいけないなと思いました。
それこそ、最近まで(北九州市立)大学に通っていたもんで、大学生と交流があったんですが、いまどきの大学生なんて軽いんですよ。
彼ら、彼女らの多くは親の保険証で病院に行ってるから、親にバレることだけを気にしていて、性病そのものは別に大したことないという認識です。いまはマッチングアプリやパパ活もあるので、素人が普通に性病にかかるんですよね。
だけど、小理屈だけで「理解してるから大丈夫だ」みたいな。そこで私は、「もっと怖いぞ」「脳にくるんだ」と伝えたところで、そんなの友達にいないし、ネットでも見たことがないからって、相手にしないんです。
これが蔓延の要因のひとつにもなっているなと思っていたので、いつかこれは伝えたいなと思っていました。
――これも実際のケースなんですよね。
はい、かなり昔の依頼者です。我々の時代は鼻がなくなるとか、そういう病気だと思われてましたけど、彼は見た目は普通なんです。見た目に症状が出なかったから、きちんと的確な治療を受けてなかったばっかりに梅毒の感染が脳まで及んでしまい、それでこういう状態になってしまった。本能の部分だけが残って。
――体格がいい方ですよね。
大学で体育会の部活をしていたので、めちゃくちゃ大きかったです。で、いざ家に行ってみると便器も水道も洗面所も陶器のものはすべてぶっ壊してましたからね。しかも、「なんだよっ」「うるっせーんだよ」「だからなんだってんだよ」の3語しかしゃべれない。さらにびっくりしたのは、その3語で会話が成立するんですよ。