もしも日本に配備されたら

さて、もしもこの「シーグライダー」が日本に配備された場合、在日海兵隊はわが国周辺海域の有事の際に、どのような運用を想定しているのだろうか? 軍事に詳しい航空専門家の嶋田久典氏に聞いてみた。

「米軍が策定した『2035年構想』によれば、現在、米海兵隊は南シナ海での対中国戦を睨み、中国の軍事戦略A2/AD(接近阻止・領域拒否)エリア内側に入り込んで活動する形態に部隊を改編中です。従来の戦車、水陸両用装甲車を捨てて、フェリー改造の小型揚陸艦や戦術輸送機を駆使して小さな島に隠密理に対艦ミサイル、防空システム、兵員を運び込むことというものになっています。

しかし、組織改編だけが先走り、この構想を実現する核心となる装備がないままです。低速でステルス性もない小型揚陸艦や戦術輸送機だけで、中国軍に感知されずにこうした任務を遂行できるかどうかは疑問です。その点、『シーグライダー』は輸送の有力なオプションとなる上に、ステルス性に優れるという利点がある。水上を飛行するため海面からのクラッター(反射波)に紛れやすく、熱源のない電気駆動なので赤外線を出さないなどの特性により、レーダーで発見されにくいのです」

ちなみに、米国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)では、海上交通のプロセスを根本から変えるべく、「地面効果」を効率的に使って100トン以上の重量物を輸送する「リバティーリフター」という水上飛行機の開発が進んでいる。

米国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)が開発を進める水上飛行機「リバティーリフター」
米国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)が開発を進める水上飛行機「リバティーリフター」

製造はジェネラル・アトミクス社とボーイング子会社のオーロラ・フライト・サイエンス社が担当し、2024年半ばから詳細な設計とデモが行われる予定だ。