スタバのレジに並んで現金を払うのは日本人だけ!?

日本と対照的に、「キャッシュレス先進国」となっている中国は、コロナ禍の以前から、すでに「ウィーチャットペイ」と「アリペイ」の2つのQRコード決済が広く浸透していた。

ケンタッキー・フライドチキンでもスターバックスでも、お店のレジで注文する客は1人もおらず、入店したらそのまま席に座り、自分のスマートフォンの専用アプリから注文・決済を済ませて、出来上がり通知が届いたらカウンターへ受け取りに行く、「モバイルオーダー」のサービスを老若男女が使いこなしていた。

日本でもモバイルオーダーはあるが、浸透しているとは言い難い
日本でもモバイルオーダーはあるが、浸透しているとは言い難い

アフターコロナでは、中国のキャッシュレス化はさらに先へ進み、指紋・顔・手の静脈などを用いた生体認証決済が始まっている。特に、手のひらの静脈による認証は、ウィーチャットペイに採用されており、より早くより正確、かつ偽造困難な決済手段として、交通機関、小売店や飲食店、オフィスや学校などへの導入が進められている。

QRコード決済やモバイルオーダーについては、日本にも同様のサービスはあるが、利用率はまだまだ低く、東京でさえレジに長蛇の列を作って並んで注文し、現金で支払う場面は珍しくない。現金主義は、地方ではさらに色濃く残っており、キャッシュレス専用セルフレジが導入されたまま、使われずに佇んでいる光景が広がっている。

海外でキャッシュレスが早く浸透し、日本では遅れている理由として、「日本には偽札が流通していなく、現金が安全に使えるからだ」という指摘が出てくることがあるが、それだけでは、世界の中で日本だけが取り残されている現状の説明としては不十分だろう。

中国のスターバックスにて 筆者撮
中国のスターバックスにて 筆者撮

それよりも、日本がキャッシュレス後進国になってしまった決定的な原因は、サービスの「広め方」を失敗した点にある。サービス開始当初に「なんか危なそう」と、特に中高年層に思われてしまった結果、キャッシュレス決済の普及につまずいてしまったのだ。

日本では、何事においても、「なんか危なそう」と思われてしまったらアウトである。「なんか危なそう」な商品やサービスは、本当は素晴らしいものだとしても、なかなか利用してもらえなくなる。「すごい」「面白い」「斬新」よりも、「みんなが知っていて」「信頼できて」「ちゃんと安心できる」選択肢の方が好まれる、というのは日本ならではの特徴の1つだ。

日本の各種ペイは、サービス開始当初、〇%オフやキャッシュバックのキャンペーンで「お得」感を強くアピールしたが、それらは横断的なサービスではなく、それぞれのサービスが利用できる店が限られていた。キャンペーンや店に応じて何種類も使い分ける必要があり、ペイは「お得だけど使いづらい」ものとしても印象付けられたのだ。