1か月で50杯を食べ歩く

中村さんがfacebookで同会を立ち上げたのは2019年9月のこと。最初は友人たち10人程度と情報交換する場だったが、いつのまにか人気サークルになり、昨年だけで会員数が2万人も増えたという。

「コロナ禍の影響があると思うんですよね。外食しても、あまり店の中に長くいたくないから、さっと食べて帰れる立ち食いがいい。あと在宅勤務で外食機会が減り、SNSで見て楽しむ人も増えたと思う」

そういう中村さんも、実はいまアメリカのシカゴに駐在していて、なかなか立ち食いそばを食べることができない。

「11月に一時帰国したときは、立ち食いそばを1か月で50食は食べたと思います」
と笑う。

そんな中村さんが、帰国の際に必ず立ち寄る店がある。

「『六文そば 中延店』です。ここは4か月くらい閉店していたんですが、最近また再オープンして、会員の間で話題になっています。麺は立ち食いそば店でポピュラーな埼玉県にある興和物産のもの。つゆは私たちの間で『暗黒系』と呼ばれる、真っ黒いもの。『暗黒系』は東京の東方面に多いんだけれど、ここは珍しいですね。名物はなんといっても『いかげそ天』です」

というわけでさっそく、東急大井町線中延駅のそばにある、「六文そば 中延店」を訪れた。
実はこの店、昔はチェーン店だったが、現在はそれぞれの店がのれん分け、独立していて、他にある「六文そば ○○店」とは関係がない。そして現在の店主である中野栄治さん(75)は立ち食いそば店を経営するのは初めて。それまで店を経営していた先代が店を辞めることになり、すぐ上の階で居酒屋を運営していた中野さんが手を挙げて、11月7日に再オープンにこぎつけた。

「まだ仕事だろ? 頑張ってな」会員数約5万人「立ち食いそばうどんの会」が教えてくれた人情が沁みる名店_1
「六文そば 中延店」。黄色い看板が目印
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