生きてさえいれば、いいことがある
ーー昨年、お母さまが自死されたそうですね。
遠野 最後までやってくれたなって思いましたね。自分のことしか考えない母らしい死に方だなと思いました。不倫相手が病気で亡くなった翌日に後追いしたらしいんで。私は1週間くらい泣き続けましたね。「悲しい」とか「寂しい」じゃなくて「悔しい」「ふざけんな」の涙でしたね。葬儀には参列しませんでしたし、死に顔も見ていません。
ーー虐待とかネグレクトとかで苦しんでいる子どもたちにメッセージをお願いします。
遠野 難しいな…。虐待、これはね、難しいんですよ。きれいごとを言えば、きれいごとのメッセージが伝えられるんですけど、本当の本音を言ってしまえば、殺されてでもそばにいたいんですよね、親の。離れたくないと思いますよ。
ーー児童相談所に相談してみるとかは難しいですか。
遠野 例えば、内縁の夫、義理のお父さんに虐待を受けていても、お母さんがそばにいてくれたり、あとでかわいがってくれたりするならその子はたぶん、お母さんと離れるよりはそっち(誰にも相談しないこと)を選ぶと思うんですよね。そういう心理って複雑なんですよね。だから一概に「すぐ逃げて、児童相談所に行ってね」とか「おまわりさんのとこに行ってね」とは言えないな、私の口からは。
ーー虐待されていたころの自分に伝えたいことはありますか。
遠野 うーん、あんまりポジティブなことが言えない…(笑)。でも、そのまま生きていれば、今の私は43歳になって、素敵な恋をしたりとか、素敵な友達ができたりとか、素敵なお仕事をこういうふうにさせていただいたりとか、笑顔になれたり楽しいことが待ってるよって言ってあげたいかな。
取材 たかまつなな/笑下村塾
監修 林浩康(日本女子大学人間社会学部社会福祉学科教授)