男女間のわかりやすい「すれ違い」は、もう描きたくない

——第1話の現代を生きる環と周夫婦は、共働きの設定で家事分担もしっかりできていて、現代風な印象を受けました。よしながさんは、これまでも『愛すべき娘たち』や『子供の体温』などで親子モノを描かれてきましたが、今作は関係がマイルドになったというか、「対話」をしている印象を受けました。

はい。ここ5年ほどで社会は激変したと思っているので、それに合わせて調整しました。16年前は、昔ながらの夫婦のすれ違いを描いていたんですよ。

——「夫がこういうことしてくれない、妻のこういうところが考えられない」のような?

そうそう。なので、男女における「わかりやすいすれ違い」は、もう描かなくていいかなと。逆に「きちんと対話している夫婦であっても、うまくいかないことがある」というほうが、現代ではリアルなような気がします。

【漫画あり】「男女における『わかりやすいすれ違い』は、もう描かなくていい」漫画家・よしながふみが”16年寝かせた”最新作で変えたもの_2
『環と周』第1話より(©︎よしながふみ/集英社)

——どんなに努力していても、妻と夫が考えていることは違うし、娘の思考もわからない、と。

意見のすれ違いを目の当たりにして「どうしてこの人と結婚したんだろう?」と思うこともあるけれど、最終的には相手の姿勢に「こういうところが好きだったんだ」と納得する。夫婦関係って、この連続なんじゃないかなと思います。

【漫画あり】「男女における『わかりやすいすれ違い』は、もう描かなくていい」漫画家・よしながふみが”16年寝かせた”最新作で変えたもの_3
『環と周』第1話より(©︎よしながふみ/集英社)