男女間のわかりやすい「すれ違い」は、もう描きたくない
——第1話の現代を生きる環と周夫婦は、共働きの設定で家事分担もしっかりできていて、現代風な印象を受けました。よしながさんは、これまでも『愛すべき娘たち』や『子供の体温』などで親子モノを描かれてきましたが、今作は関係がマイルドになったというか、「対話」をしている印象を受けました。
はい。ここ5年ほどで社会は激変したと思っているので、それに合わせて調整しました。16年前は、昔ながらの夫婦のすれ違いを描いていたんですよ。
——「夫がこういうことしてくれない、妻のこういうところが考えられない」のような?
そうそう。なので、男女における「わかりやすいすれ違い」は、もう描かなくていいかなと。逆に「きちんと対話している夫婦であっても、うまくいかないことがある」というほうが、現代ではリアルなような気がします。
——どんなに努力していても、妻と夫が考えていることは違うし、娘の思考もわからない、と。
意見のすれ違いを目の当たりにして「どうしてこの人と結婚したんだろう?」と思うこともあるけれど、最終的には相手の姿勢に「こういうところが好きだったんだ」と納得する。夫婦関係って、この連続なんじゃないかなと思います。