アルコール飲料のCMが日常的に流されているのは、先進国の中では日本だけ
アルコール依存症についても日本は危険な国です。
2010年5月にWHOの第63回世界保健総会で「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が承認されました(もちろん、日本も参加しています)。この中で、「アルコール飲料のマーケティング」という領域があります。
そこでは、「マーケティングの強い影響力、とりわけ青少年に対する強い影響力を弱めることは、アルコールの有害使用を低減させるための重大な検討事項である」(アルコール健康障害対策基本法推進ネットワークのウェブサイト掲載、樋口進・烏帽子田彰監訳、山本幸枝ほか訳の訳文より)と謳われ、各国政府に要望も出しています。
具体的には、コマーシャルの内容と量を規制したり、若者を対象とする販売促進を制限あるいは禁止したりすることなどが盛り込まれています。
このような流れの中で、ビールだけでなく、焼酎やウイスキーなどアルコール飲料のCMがテレビで日常的に流されているのは、先進国の中では日本だけになっています。
アメリカでは、ウイスキーのような蒸留酒のテレビCMは放送しないことになっていますし、ビールやワインなどについては、CMはあっても、人が飲んでいるシーンは出さないという自主規制が存在します。
フランスやスウェーデンでは、ほとんどのアルコール類のテレビCMを禁止していますし、そのほかの国でも蒸留酒のCMは禁止状態になっているのです。
日本も自主規制(これはテレビ局によるものではなく、ましてや法律によるものではありません。アルコール飲料会社の自主規制です)がありますが、午後6時以前にはCMをやらない、未成年者向けの番組ではCMをしないという程度のものです。そして当たり前のように有名芸能人がおいしそうにビールを飲むシーンが日常的に垂れ流されています。
最近は若者がお酒を飲まなくなったというのは、彼らがテレビを見なくなったことも影響があるのかもしれませんが、一度断酒に成功した人が、このような広告によって再びお酒に手を出すということは珍しくないでしょう。
いろいろなことを考えると日本にこんなに依存症が多いのは、むしろ当たり前のように思えます。