×視力は誰でも改善できる
〇「仮性近視」はすぐに改善できる 

そもそも何をもって「視力改善」とするのか?

視力を改善することはできるのか。

この点についてお話しする前に、ハッキリさせておきたいのは「何をもって視力改善というのか?」という問題です。そもそも「視力」という言葉について、眼科専門医と一般の方々との間には大きな認識の乖離(かいり)があるようなのです。

おそらく、みなさんのイメージする「視力」とは、「メガネもコンタクトレンズもつけない状態(裸眼)でどれくらい見えるか」でしょう。この「どれくらい見えるか」には、「どれくらいものがハッキリ見えるか」だけでなく、「どれくらい視野が広く見えるか」なども何となく含まれている印象です。ざっくり「ものを見る機能」全般を指して「視力」と捉えているのではないでしょうか。

一方、眼科専門医の言う「視力」は、より厳密です。

「視力」とは、医学的には「ものを見る機能」全般を指す言葉ではありません。

では何を「視力」と呼ぶのかというと、「視力検査表のランドルト環(Cの字)を判別する力」です。

世の中には、視力が高いけれども真っ直ぐ歩けない人もいれば、視力が低いけれども真っ直ぐ歩ける人もいます。つまり「視力」とは「ものを見る機能」の一つの指標にすぎないのです。

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裸眼視力の改善は、視力低下の原因による

そのうえで、改めて「視力を改善することはできるのか」──一般的なイメージに合わせて、この問いを「裸眼視力を改善することはできるのか」と置き換えて答えるならば、改善できるかどうかは視力が落ちている原因によります。

例えば、数値的には同じ0.1以下の近視でも、眼軸(目の直径)が伸びてしまって遠くが見えなくなっているケースと、毛様体筋という筋肉が緊張して遠くが見えなくなっているケースとでは、改善できる可能性が大きく違ってきます。

前者の場合は、視力が0.1以下になるほど伸びてしまった眼軸が、何らかのトレーニングで短くなって視力が改善するというのは考えられません。

では眼軸が伸びてしまったら、一切近視の改善は不可能かというと、そんなことはないのです。

0.1を切る前であれば、適切なトレーニング法で、ある程度までは視力を改善することは可能です。0.01を0.1にすることはできないが、0.1を0.2以上にすることはできるということです。

また、0.01からの視力改善はできないとはいっても、適切なトレーニング法で「ものが見えやすくなる」という効果は期待できます。

検査値としては0.01を0.1にすることはできずとも、「見え方」が改善されることで日常生活の不便が多少なりとも解消される。こういう効果をも視力改善と見なすのであれば、誰でも一定程度は「視力を改善することができる」といえるのです。

ただ、そこでも「子どもはトレーニングに集中できないから効果が出づらい」「高齢者は脳科学的な問題が絡んで効果が出づらい」といった制約が生じる場合があることも事実です。効果が出る、出ないは複合的に捉えなくてはいけません。