「仮性近視」はすぐに改善できる

さて一方、先に挙げた例のうちの後者は、毛様体筋の緊張により一時的に近視が強くなっている「仮性近視」です。これは少し休んだり眼球を温めたりして毛様体筋の緊張が緩和されれば、一時的に強くなっていた分は解消されます。

例えば、もともと0.2だった視力が仮性近視で一時的に0.1になっていたとしたら、毛様体筋の緊張を緩和させることで、0.2まではすぐに改善できるということです。

そもそも、ものの像を結ぶ能力という意味での視力は、移ろいやすいものです。朝と夜とで大きく異なることも珍しくありません。例えば視力検査で1.5と出ている人でも、ドライアイ気味で日中ずっとパソコン作業をしていたりすると、時間がたつごとに見えづらくなっていく場合があります。

このように「絶えず目を使っているなかでの視力」を「実用視力」といいます。

今の例でいうと、ドライアイを原因としてパソコン作業中に視力が下がるのは、「実用視力が落ちている」ということ。そして、こうした実用視力の低下は、目を温める、休めるなどの対策によって簡単に改善することができるわけです。

眼科医が警告「ブルーライトカットメガネは子どもにすすめない」臨床実験の結果「近視を進行させてしまう恐れがある」の衝撃_4
すべての画像を見る

どんな視力改善法も「万能」ではない

眼軸が伸びている近視なのか、筋肉疲労からくる仮性近視なのか。この違いにより、視力回復トレーニングの効果の出方についても、少し説明が変わってきます。

例えば、100円ショップで売っている視力改善メガネにも効果はあります。ただし、これで改善できるのは仮性近視だけ。つまり一時的に強くなった近視を改善できるだけです。それも、かけたらすぐに効果を感じられる代わりに永続性はありません。筋肉の疲労と共に、またすぐに仮性近視になってしまいます。

眼軸が伸びている近視の視力改善トレーニングとしては「ガボール・アイ」が挙げられます。こちらは2週間〜1カ月をかけて、じっくりと視力改善していきます。永続的ではないのですが、半年ほどは効果が持続します。ただある程度効果は限定的で視力0.2程度の回復と言われています。

いかがでしょうか。ひと口に「視力改善」といっても、言葉の捉え方によってさまざまなケースが想定できることがおわかりいただけたかと思います。

このあたりの言葉の意味合いも明確にしたうえで、果たしてご自身は何を求めるのかを考えてみてください。

どのような医学的手法も万能ではありません。よく「これだけですべてよくなる」というようなうたい文句を見かけますが、本当に効果のある手法は、何であれ限定的な効果にとどまるものです。

正しい知識があれば、「可能なこと」「不可能なこと」の線引きができます。過剰に期待することなく、かといって何もかも諦めることもなく、自分の目のためにできることを可能な限り取り入れていきましょう。

文/平松類 写真/shutterstock

#1『「ブルーベリーは目にいい」は戦時中に作戦としてバラまかれたエセ情報…眼科医が警告「目にいいといわれるサプリを飲んでも視力は回復しない」』はこちらから

#3『眼科医が警告する「レーシック・ICLの怖いリスク」…30代後半になってからの手術は「慎重に検討したほうがいい」という理由』はこちらから

『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SB新書)
平松 類 (著)
眼科医が警告「ブルーライトカットメガネは子どもにすすめない」臨床実験の結果「近視を進行させてしまう恐れがある」の衝撃_5
2023/9/6
¥990
224ページ
ISBN:978-4815621841
習慣を見直せば「一生見える目」は手に入る!

・1カ月以上前に買った目薬を使っている
・3年前に買ったサングラスを今でも使っている
・水をがぶ飲みしてしまう
・寝つきがいい
・ブルーライトカットメガネを使っている
・目がいいから、検診を受けていない

1つでも当てはまるあなたは、要注意!
知らず知らずのうちに、自分の目を傷つけてしまっているかもしれません。
50万部突破『ガボールアイ』シリーズの著者が警告する「視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと」。

・1カ月以上前に買った目薬を使っている
・3年前に買ったサングラスを今でも使っている
・水をがぶ飲みしてしまう
・寝つきがいい
・ブルーライトカットメガネを使っている
・目がいいから、検診を受けていない

1つでも当てはまるあなたは、要注意!
知らず知らずのうちに、自分の目を傷つけてしまっているかもしれません。
50万部突破『ガボールアイ』シリーズの著者が警告する「視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと」。


第1章 巷にあふれる「目の健康常識」は眼科専門医の非常識
× ブルーベリーは目にいい
× 緑を見ると目にいい
△ 暗いところでものを見ると目が悪くなる
× メガネを使うと近視が進む
× 若いうちは老眼にならない
△ 現代人の目にはブルーライトカットメガネが必要
× 視力は誰でも改善できる
× 視力を取り戻したかったら、視力回復手術を受ければいい
× 眼トレは、やればやるほどいい

第2章 その習慣、目にとっては「拷問」です
× 習慣的に目を洗う
× 目薬を差したときに目をパチパチする
× 目が充血したら、「充血用の目薬」を使う
× 1カ月以上前に買った目薬を使っている
× ドライアイ解消の最善策は目薬である
× コンタクトレンズの手入れは「ワンステップ」でいい
× ディファイン、カラコンを使っている
× 目をこする
× 目の紫外線対策は必要ない
× 筋トレをめちゃくちゃがんばっている
× マッサージ、ツボ刺激は、視力低下防止、目の疲労回復に効果的
× 目がいいから、検診を受けなくても大丈夫
× 寝付きがいいのは健康のサイン

第3章 放っておいたら危ない「目のサイン」
× 急に視力が落ちてきた
× 急に目が見えなくなった
× ものが光って見える
× 蚊が飛んでいるように見える
× 視野が欠けてきた
× 異常に光がまぶしい
× 目が疲れやすい
× 目がかすむ
× ものが二重に見える
× まぶたが下がってきた
× 目が充血する、かゆい、ショボショボする、ゴロゴロする
× 見たいところがよく見えない、歪んで見える
× 目の健康のセルフチェック法

第4章 知らないと危ない「眼科選び」
× かかりつけ眼科いない
× 手術は眼科医に任せておけば大丈夫
× 「世界水準」を謳う眼科なら安心できる
× ジェネリックの目薬を選んでも、医師に報告しない 
amazon