複雑怪奇な制度によるシステム改修の負担

経理担当者の事務負担が大きくなる背景として、取引先のインボイス登録状況ごとに対応を変えなければならないことが関係する。経理担当者としてはイレギュラーな作業は効率を落とすため、できるだけ単一税率で処理したいが、以下の質問から、フリーランス/小規模事業者が2割以上という答えは62%超だった。

質問:
あなたの会社の取引先に占めるフリーランス/小規模事業者の割合はどの程度ですか?

回答:
ほとんどいない(1割未満) 31.5%
少しいる(2割〜4割程度) 27.5%
そこそこいる(4割〜6割程度) 14.7%
多い(6割〜8割程度) 11.0%
ほとんど(9割以上) 8.9%
わからない 5.5%
その他 1.0%

STOP!インボイス 「経理担当者向け「インボイス制度」に関する意識調査」
STOP!インボイス 「経理担当者向け「インボイス制度」に関する意識調査」

複数税率の処理は、税率を間違えると納税額も変わり損益実績も変わるので更なる正確さを求められる。
さらに、政府が負担軽減という建前で導入した激変緩和措置は、ただでさえ複雑なインボイスをさらに複雑怪奇にさせ、税の三原則「公平・中立・簡素」から大きくかけ離れる。
*激変緩和措置の実態は、筆者のtheLetter「インボイス 負担軽減策の実態」(2022年12月5日)参照

3年間もしくは6年間限定で対応を変化させなければならない激変緩和措置にシステム対応できない場合、免税事業者との取引は手計算になる場合もあり、複雑な事務処理に対応しきれないため免税事業者との取引を諦める会社が出る可能性も懸念される。 では、システムの導入状況はどうなっているのだろうか。

STOP!インボイス 「経理担当者向け「インボイス制度」に関する意識調査」
STOP!インボイス 「経理担当者向け「インボイス制度」に関する意識調査」

質問:
設備投資のための補助金がありますが、 あなたの会社は新システムの導入などを検討していますか

回答:
していない 39.1%
まだ決まっていない 18.6%
補助金があるのを知らなかった 18.3%
している 15.2%
わからない 8.7%

「検討している」という回答はわずか15.2%。国会で閣僚は「IT導入補助金が使える」と繰り返しアピールしていたが、 ほとんど認知されていないという結果に。そもそも1人から4人程度しか経理に人数を割けない中小企業は、補助金があっても高額ソフトの導入やシステム改修費を工面する余裕は無い。1人で全て対応する個人事業主は尚更である。

仮にシステムを改修できたとしても、結局は請求書や領収書のインボイス番号確認や、免税事業者に対する激変緩和措置などの仕訳入力がとても煩雑になるため、業務工数が確実に増えるという不安の声は多数あがっている。