007ダニエル・クレイグと脚本家久世光彦
豊田真由子議員の秘書に対する言動が話題になった年には、TVを持っていない私も連日、豊田議員の画像を見ることになり、「だれかに似ている。だれだろう、だれかに……」と気になって、とうとう「わかったー!」と《発見》し、それを投稿した。《大発見》レベルと自負していた。
J 豊田真由子と東野英治郎(『水戸黄門』)
ところが落選した。採用されていたのは豊田真由子と星田英利(元・ほっしゃん。)だった。
「似たらへん!」と、その号の『週刊文春』をバンバンと叩き、友人知人に抗議したが、さらに落胆したのは、Jの発見に理解を示してくれる人が少なかったことである。
異性の組合せに、人は、似ているかどうかを観察する前に、まずとまどってしまう傾向があるようだ。
おかしいではないか。世界的にたいていの親子は、母と長男、父と長女が似る(異性親に似る)。「まあ、ぼっちゃん、ママそっくり」とか「まあ、娘さんはパパそっくり」は、昔からどこででも言われてきたコメントではないか。
落胆を経て、徐々に私はわかってきた。多くの人は、人を見る時、顔の造作を見ていないのだ。雰囲気だけ見ているのだ。
いや、雰囲気すら見ていないかもしれない。髪形と、メガネをかけているかいないか、太めか細めか、丸顔か面長か、これくらいしか見ていないとさえ言っても過言ではない。
ストレートのロングヘアの妙齢女性がいると、たちまち小松菜奈に似ている、仲間由紀恵に似ている、浅野温子に似ている(時代順)。ショートカットでミニスカートをはいていると、たちまち波瑠似、吉瀬美智子似、黛ジュン似(世代順)。
やれやれだ。髪形とメガネしか見てない世の中の人々は、もしかしたら「南海キャンディーズの山里亮太と画家の藤田嗣治は似ている」などととんでもないことさえ言い出しかねない。
ちなみに山里亮太が似ているのは、松田優作だ。このさいついでに、爆笑問題田中と郷ひろみ、007ダニエル・クレイグと脚本家久世光彦、ゴルフ宮里藍とキャプテンウルトラ、ダルビッシュ有とつみきみほ。
しかし、ほとんど理解してくれる人がいなかったのが、これまでの私の発見人生だった。
文/姫野カオルコ イラスト/もんでんあきこ
※続きは、ぜひ本書『顔面放談』にてお楽しみください。