稀代の漫画家、もんでんあきこによるヒット作『エロスの種子』は戦前から現代を舞台に、男と女の織りなす官能的で、ときに排他的、背徳の香りも漂うエロスの世界を描いた傑作漫画だ。
もんでんあきこならではの繊細なタッチで描かれる実に美しく官能的な女たち、情けなくも愛おしい男たちによる数々のドラマは多くの読者を魅了し、1〜7巻まで累計発行部数は180万強となっている。
伝説のMV『bubble dancer』はいかにして生まれたか
そして、この傑作『エロスの種子』においては、過去にあるコンテンツが生まれている。
それが、MV「泡姫 bubble dancer」だ。
“bubble dancer”という、キャッチーなフレーズが散りばめられたせつないヴォーカルとともに、『エロスの種子』の官能的でメロウなシーンが展開するMV。
実はこの楽曲は、もんでんの大親友でもある、同じ北海道在住の直木賞作家・桜木紫乃の詞が端となっている。
頭を休めるために、よく詞を書くという桜木紫乃が、ふと降ってきた “バブルダンサー”という言葉から1編の詞を書き、当時連載中であった漫画『ブルース』(原作/桜木紫乃・作画/もんでんあきこ)の担当編集者に「好きにして」と送ったというから、豪気だ。
その編集者がたまたまギタリストでミュージシャンでもあったことから、詞「バブルダンサー」にメロディとヴォーカルがつき、さらにそのナンバーを聴いてインスパイアされた、もんでんが連載中の『エロスの種子』で「泡姫 bubble dancer」という短編漫画を描いた(『エロスの種子』第6巻収録)。
「桜木紫乃さんの歌詞を読んだ瞬間に、あ、描けそう、短編ならって」と、もんでんは思ったのだと言う。
こうして生まれた奇跡のような楽曲と漫画を、さらなるハーモニーへと昇華させるべくできたのが、1編のMVだった。
集英社オンラインでは、最新刊『エロスの種子』7巻刊行を記念に、この伝説のMVを改めて公開する。
稀代の絵師でもある、もんでんあきこが描く官能的で叙情あふれるシーンの数々と、情緒豊かな桜木紫乃ならではの言葉で紡がれる歌詞が織りなす、懐かしくも色っぽい世界を堪能してほしい。