猟友会支部長は「ひと安心だけど、残念だった」
その連絡を受けた標茶町役場農林課林政係の係長は「驚いた」の一言だったという。
「私どもは27名からの鳥獣被害対策実施隊を結成し、22名ものハンターがヒグマ対策にあたっていました。オソ(OSO)は6月25日に標茶町チャンベツの町有林に設置されたヘアトラップに写っていたのを最後に、行方はわかっていませんでした」
まさに「寝耳に水だった」というのは猟友会標茶支部支部長の後藤勲さん(78歳)だった。
「21日の朝に標茶町役場の農林課林政係の係長が『重大なニュースがある』と私に電話してきて、何事かと思って自宅で待ってたら、係長と副係長話が『オソが釧路町役場によって仕留められた』と。
この4年間、朝も夜もなくいつ何時でもケータイを離さず、目撃情報を待ち警戒態勢にあったもんだから、ひと安心の気持ちももちろんあるけど、残念だった。標茶で獲りたかった、という思いはありますよ」
後藤さんいわく、「OSO18」はわからないことが多すぎた、という。
「クマは一晩中歩いて40キロも移動するのはよくあることだけど、縄張りの中に他の個体が侵入するのを嫌うから、行動圏は互いに遭遇しないという特徴があった。
でもオソはその縄張り意識がなく、縦横無尽に徘徊していたうえに日中はまず姿を見せなかった。
なるべく痕跡を残さないよう川の中を歩いたり、舗装道路に足跡をつけないように橋の下から迂回していたし、まるで我々ハンターの夜間の猟銃発砲が禁じられていることを知ってるかのように、カメラに映るのも22時から午前2時くらいまでの真夜中でしたから」
その難敵を倒すことが使命だった後藤さん。悔しい気持ちはあるかと聞くと
「悔しいなんて気持ちはないよ。実はオソを仕留めた釧路役場の職員は近所で幼少期から知ってる子。4、5年前から猟銃免許を取って鉄砲撃ちになってたのは知ってたし、エゾシカ駆除にもかなり貢献してた。
ガタイはいいけど大人しくて口数も少ないタイプでね。酪農家にとって数千万円以上もの被害を出したクマを倒したヒーローにもかかわらず、役場も彼本人も『名前を伏せたい』『取材を控えたい』と言っている」