「OSO18」より強いヒグマがいる可能性

その理由は意外なところにあった。

「抗議が個人に及んでしまうのを避けるためですよ。本州の一部の人たちが『かわいそう』『殺すな、動物虐待だ』と抗議してくる。国や道などの行政も、檻を設置してオソを護れと言い出す始末だ。
これだけの被害があって全国的な騒ぎになって、何千万円もの損害を受けた酪農家が苦しんでるのに、このままクマの個体数を増やすようでは、じゃあ、抗議する人らはここに住んでみるかいと言いたくなりますよ。農家の被害を補償してくれるのかと」

「OSO18」の駆除に成功したとはいえ、後藤さんいわく「こんなのは氷山の一角に過ぎない」という。

「オソを倒したとき、その顔には2箇所の傷があったと聞いた。そこから菌が入ってなんらかの病気になり、弱ってたんじゃないか。でなければ朝5時に牧草地で横たわってるなんてことはない。
おそらく繁殖期に別のクマと喧嘩してつけられた傷でしょう。ということは、オソに手傷を負わせるほどの強いクマが他にいるということ。まだまだ安心はできない」

標茶長役場で姿が確認された「OSO18」(提供:標茶町役場農林課林政係)
標茶長役場で姿が確認された「OSO18」(提供:標茶町役場農林課林政係)

かつて「OSO18」に牛1頭を殺される被害に遭った厚岸町の牧場「おのでらふぁ〜む」の小野寺竜之介さん(34歳)も、決して安堵しきってはいない。

「殺された牛は子供を産んだばかりの雌牛で、『さあ、これからたくさんの乳を出してくれよ』という、大事な仕事のパートナーのような存在でした。
うちの牧場は乳牛40頭とかなり小さい牧場です。そんな牧場にとってはたった1頭をなくすだけでも大損害ですし、気持ち的なショックも大きい。やはりヒグマの個体数を減らさなければ根本的な解決にならない」

最後に後藤さんは言う。

「ヒグマとの共存は無理。しかし、我々ハンターだってクマを見つけたら即殺せとも思ってない。人命や農家の損害に関わることなので、しっかり頭数を管理しないといけない。
野放しのクマは必要なくて、クマ牧場などで保護するのでいいのではないかと思っています。人間が檻の中で暮らすわけにいかないですから」

OSO18よりも強いクマの出現に人間が脅かされるより前に、手を打たなければいけない。

取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班