本部長も涙した37年目で初めての値上げ

また、価格に関してもからあげクンならではのこだわりが1つある。

それは、値引きセールを一切しないこと。

コンビニでは、販売数を伸ばすためにクーポンを発行し、消費者の購買につなげる販促活動がよく行われているが、からあげクンの場合は値段を下げるのではなく「1個増量中」という個数を増やすキャンペーンを実施している。

発売以来一度も値引きセールをしていない理由を吉岡さんは説明する。

「からあげクンは1986年に生まれた当初から、他のホットスナックが100円代だったのに対し、200円代という高価格帯に設定していた商品でした。そのため、値引きによるブランド価値の低下が起こらないないように、“増量キャンペーン”という個数での販促活動を行っています。ちなみに、からあげクンが1個増量セール期間中は、1店舗あたり1日平均10個くらい販売数が伸びるんです」

しかし、近年の原材料の高騰や輸送コストの上昇によって、発売以来一度も値上げせずにきたからあげクンが、2022年5月末からついに、従来価格の216円(税込)から238円(税込)へと約10%の値上げに踏み切った。

ローソンの看板商品のこの値上げは、まさに本部長にとっても苦渋の決断だったそうだ。

「商品本部長が、からあげクンの価格改定を決める会議で涙を流すくらい、値上げは断腸の思いで決断したものでした。1986年から一度も値上げしていないブランドでしたが、人件費や材料費の高騰を考えると、そうせざるを得ない状況だと判断したんです」

《シリーズ累計41億食》コンビニが生んだ国民食「からあげクン」秘話の数々。「発売から37年間一度も価格改定しなかった看板商品の値上げに本部長は会議で涙を流した」_5

担当者が涙するほど、ローソンの“アイコン的存在”として、社員からからも一目置かれるからあげクン。値上げした今もなお、主力商品であることに変わりないが、ロングセラーでありながら柔軟に新しいチャレンジをしている商品でもある。