依存の対象は「宝くじ」

安藤さんが覚えた違和感は、当を得ていたようだった。

Bさんは数年前にも大きな借金を背負っており、全額を一括返済していたが、その原資は前の会社からの退職金だったことがわかった。逆に言えば、借金を返すために、会社を辞めざるを得なかったということだった。

2度目ともなると、さすがに勤務期間が短く、退職金が十分に積み上がっているわけではない。今回はそれに頼ることもできず、法的な整理しか手段はなかった。だが、Bさんは借金の本当の理由を自分の口からは語らなかった。安藤さんがそれを知ったのは、すべての債務整理手続きが終了した後のこと。しかも偶然だった。

たまたま、Bさんのことを知っていた知人がいた。その人の話では、Bさんは「ロト6」「ロト7」などを大量に購入する「宝くじ依存」とのことだった。あちこちの売り場で、何度も何度もBさんの姿を目撃したという。

宝くじでの一攫千金に目がくらみ、大手企業を「自己都合」で退職…なぜ割に合わないギャンブルとわかっていながら依存してしまうのか?_2

それにしても、多額の借金を抱えてまで宝くじにのめり込むとは……。

日本国内のギャンブル依存の原因は、パチンコ、パチスロが大半を占める。そのほかには、競馬、競輪などの公営ギャンブル、違法の裏カジノ、オンラインカジノなどと並び、FX取引や先物取引、仮想通貨などへのハイリスク・ハイリターンの投資、さらに宝くじも依存の対象となる。

大当たりすれば、人生を一変させてしまうほどの大金が手に入る宝くじだが、そんな幸運に恵まれる確率は限りなくゼロに近い。夢は買えるが、「儲かる確率」を考慮すると、ギャンブルとしてはまったく割に合わないことがわかる。

全国自治宝くじ事務協議会によると、2021年度の宝くじの総売り上げは8133億円。それに対し、当選金として支払われる総額は3758億円で、単純な還元率は46・2%に過ぎない。しかも金額の多くは、一握りにも満たない高額当選者がごっそりと持っていく仕組みだ。