宝くじには「戦略がある」という妄信
同じく、協議会の調べによると、直近1年間に宝くじを購入した人の平均金額は2万6650円だった(2019年度)。あくまでも1人当たりの平均額なので、この数倍から数百倍を「くじに突っ込む人」も少なくない。
パチンコや競馬、マージャンなどに比べると、宝くじには論理的な戦略、技術が入り込む余地はまったくなく、売り場や購入日時などで研究を重ねたつもりでも、「おまじない」「ゲン担ぎ」の範囲を出ない。
ネットで検索すると「ロト・ナンバーズ攻略」「〇〇必勝法」の類はいくつもヒットするが、当然ながら根拠に基づいたものなどあるはずもなく、「オカルトレベル」に過ぎないものばかりだ。
少し前、米ミシガン州の老夫婦が、数学的知識を応用しながら、独自に生み出した宝くじ必勝法で、日本円にして28億円以上を稼ぎ出したことがニュースとなった。そのからくりは、「ロールダウン」と呼ばれる、米国の宝くじ独特の「キャリーオーバー」分配法のスキを突いたものだった。
日本国内のロトやサッカーくじでも賞金額のインフレが続き、現在では「1等10億円」なども普通に存在している。ところが米国では、桁違いのスケールとなることがあり、2022年11月には2970億円の当選が出たことが話題になった。
日本の場合は、当選者が出なかった場合のキャリーオーバー額にも天井がある。当選者が出たら、一定額の上乗せ賞金を支払い、さらに上限を出た分については、次回当選者に振り分ける仕組みだ。
米国では、地域や種類によってさまざまなようだが、原則、キャリーオーバー分は次回当選者に一気に支払われるという。さらに、そのキャリーオーバー分は、一定額を超えると、1等以外の当選者にも分配される。
数学オンチの筆者にはなかなか理解が難しい理論なのだが、ミシガン州の老夫婦はその仕組みを合法的に突く手法で大金を獲得したらしい。
したがって、1等賞金のみにキャリーオーバーの恩恵がある日本のロトやサッカーくじには使えないことから、やはり必勝法などは存在せず、そもそもギャンブルとしても成立しないわけだ。
しかも、宝くじには、ゲーム的な娯楽性、リアルタイムの「しびれるようなスリル」にも乏しいため、外部から見ると「なぜ、依存してしまうのか?」と疑問に感じるが、「大金をつかみ取る刹那の夢」に向かって、「自分なりの戦略がある」と信じているからゆえ、当事者には十分な娯楽性やスリルがあるのだろう。