閑古鳥が鳴くかもしれないTSMC熊本工場

2‌0‌2‌1年初頭に、世界的に28‌nmのロジック半導体が不足した。そのため、日米欧の各国でクルマが生産できなくなった。そして、日本政府から招致を受け、TSMCが熊本に28/22~16/12‌nmのロジック・ファウンドリー工場を建設することになった。

ところが、ルネサスなどの垂直統合型の半導体メーカーがTSMCに生産委託している28‌nmのロジック半導体の不足は2‌0‌2‌1年前半で解消されてしまった。その代わりに、ルネサスなどが自社工場で生産するレガシーなパワー半導体やアナログ半導体が不足することとなった。

その理由は、電気自動車や自動運転車が普及し始めたことによる。電気自動車にはパワー半導体が必要であり、自動運転車にはさまざまなセンサからの情報を処理するためのアナログ半導体が大量に必要になった。

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そして、これらパワー&アナログ半導体は、パワー半導体メーカーやルネサスなどの垂直統合型の車載半導体メーカーが生産する。TSMCへの生産委託は(ゼロとまでは言わないが)、ほとんどない。 

となると、2‌0‌2‌4年に稼働し、28~12‌nmを生産する予定のTSMC熊本工場は、一体何のための半導体をつくるのだろうか? 

少なくとも、28~12‌nmのロジック半導体の逼迫は解消している。そして、TSMC熊本工場ではパワー&アナログ半導体は生産できない。となると、TSMC熊本工場はつくる半導体がなくて閑古鳥が鳴くことになるかもしれない。

結局、経産省が立案した半導体政策は、またしても「大失敗」に終わることになるのではないだろうか?