レセプト反映までの時間は1ヶ月半
西村智奈美議員はレセプトの反映時間についても質問し、先ほどと同様に「医療DX実現」の怪しさを一瞬で露呈させている。
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【西村智奈美 議員】(受診後に情報を閲覧できるように)レセプトが反映されるまでどのくらい時間がかかりますか?
【加藤勝信 厚労大臣】月末締めで、それが支払金等に回って、それからになりますので、最短で1ヶ月半ぐらいと承知しています。
【西村智奈美 議員】最短で1ヶ月半ですね。例えば、新型コロナウイルスに感染したことが1週間前に分かった方が倒れていた時に、レセプト情報は反映されていないわけですね。で、しかも倒れている方が意識不明だったら、それこそ(医療情報は)使えない。
出典:2023年7月5日 衆議院 閉会中審査
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冒頭にも紹介した通り、加藤勝信厚労大臣はマイナ保険証一体化の大義として、現行の仕組みでは感染状況把握が難しいことを強調してきたが、実際は一体化したところで、それすらも実現できないことがこの短いやり取りで明確になったと言える。
つまり、マイナ保険証を一体化しても、実現される医療DXはきわめて限定的だ。「閲覧できる情報の期間が3年(もしくは5年)分」では、現在は口頭で伝えている5年以上前の大病に医療機関は気付けないし、「「レセプトの反映時間が最短1ヶ月半」では、直近1ヶ月半以内にコロナ感染した人が意識不明で倒れていても、医療機関は感染歴に気付けない。
これでは現行の仕組みに劣る面すらあるのだ。
くわえて次々に発覚するトラブル(デメリット)も深刻だ。国民皆保険を崩壊させるほどの制度欠陥が既に複数露呈している上、病歴を含む個人情報漏洩、医療機関の負担増大によって、日本の医療機関に対する信頼は地に落ち、医療崩壊すらも引き起こしかねない。
*デメリットの詳細と因果関係は筆者のtheletter「「医療DX」ではなく「医療崩壊」を実現するマイナ保険証義務化」(2023年7月13日) 参照
以上のことから、マイナ保険証一体化による事実上義務化(紙の保険証廃止)は、今すぐにでも中止にすべき愚策と断言できるのではないか。
文/犬飼淳