まだエビデンスが少なく、ガイドラインもはっきり確立されてない
性別違和の日本屈指の医療機関「岡山大学病院 ジェンダークリニック」が性同一性障害の患者1150人対象に行った調査によると「自分の性別に違和感を抱く」人たちの自死願望は回答者の59%を占め、自傷行為や自死未遂の経験者は20%を超えた。もともと自己否定感を抱えているうえに、ホルモン投与を始めると精神的に不安定になり、さらに自死率が高くなるという。
産婦人科医でPillクリニック院長の宮本亜希子氏に(自分の性別ではない)異性のホルモンを投与する際のリスクを聞いた。
「男性が女性ホルモンを打つと不安定になるのは、そもそも男性ホルモンのテストステロンには多幸感をもたらし、怒りや不安、ネガティブな感情を落ち着かせる働きがあるところ、女性ホルモンのエストロゲンを打つことにより、元々あったテストステロンよりもエストロゲンが優位になるんですね。そのため、性欲が減りますし、情緒面でも男性的な攻撃性が薄れて柔和になるため、それにより鬱っぽくなる方もいるのです」
さらには、次のようなリスクもあるという。
「男性がエストロゲンを投与すると、血栓症や肝機能障害、心不全、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧のリスクを高めますので、定期的な検査が必要です。その点、女性に男性ホルモンを投与するほうが重大な副作用は少ないようです」
ホルモン投与する際の注意点についても聞いた。
「トランスジェンダーへのホルモン補充は、まだエビデンスが少なく、ガイドラインもはっきり確立されていません。医師と患者さんとできちんと相談しながら投与期間や投与量を決めることがとても重要です。保険が効かないので高額なために、個人輸入などしがちですが、自分で勝手に投与量を決めて打ったり、勝手にやめたりは絶対にしないことです」
女性の更年期障害など、ホルモン補充療法は、使い方によっては、心身ともに楽になるケースも多々ある。しかしながら、バランスを崩し自らを苦しめる結果に陥ることもあり、これからも専門家の研究とエビデンスの積み重ねが求められている。
取材/集英社オンライン編集部ニュース班