どんなに姿形を女に作り変えても女としては見られず、愛されない
――麻紀さんの場合はどんな副作用に苦しんだのでしょうか。
「強烈な頭痛よ。解熱鎮痛剤を飲めば治るので、毎日のように痛くなったらすぐ鎮痛剤を飲む、という感じでした。19歳の時に大阪で睾丸摘出手術を受けた後や、30歳でモロッコで性転換手術(男性器除去、造膣)を受けた後も、血と膿にまみれて肉体的な激痛に襲われて…とにかく男が女に生まれ変わるには、女性ホルモン投与の副作用はもちろん、術後は想像を超える痛みと苦しみが待ってるのよ」
――麻紀さん自身はホルモン投与によるバランスの乱れなどの不調はなかったのでしょうか。
「だいたいそういったバランスを崩すにはきっかけがあるの。ほとんどが恋愛よ。体は女になっても自分が男だった過去は消せない。それに、好きになる男はたいていノーマル男性だから、最初は物珍しく相手にされても、結局は他の女の元にいっちゃうの。どんなに姿形を女に作り変えても、女として見られず、愛されず、生きられない。その葛藤が自分を追い詰めるの。そうして自死を選んだ子たちを何人も見てきたわ」
――麻紀さんご自身がそのような葛藤から、自死を思い悩んだこともありましたか。
「そりゃ私だって崩れそうになったことはありますよ。でも、自死を思い悩むことはなかった。結局は綺麗さっぱり諦めて吹っ切るしかないの。自分のための人生なんだから。それにね、私は本質的には男。弁天小僧(女装の大泥棒)の生まれ変わりだと思ってる。女性っぽい仕草はするけど男性っぽいタンカも切る。惚れた男とどんな結末を迎えようと、私は私、で生きてきたのよ」
――性自認のことで悩んで、これからホルモン投与や手術を検討する方に、伝えたいことはありますか。
「ホルモン投与は手軽に始められるところはありますが、やはり覚悟と準備が必要ということね。特に性転換手術は決意してから1年、準備してさらにもう1年待ってみて、それでもやらずには死ねないという気持ちがあるのなら、やればいい。
あとは、近くに相談する人がいるかいないかももちろん重要。だからryuchellは、もしかしたらそういう相談ができる人がいなかったんじゃないかしら、と思うわ。一人で抱え込んでしまったのかも」
――相談する人というのはどういう人が適任なんでしょうか。
「ホルモン投与や性転換手術の経験者です。もちろん医師に相談して進めていくでしょうが、医師よりも近い存在の相談者は絶対必要ですね」
――麻紀さんにとっての相談者とは、どなただったのでしょうか。
「私はショーパブの先輩やらいろいろいたから。でもね、結局は自分の信念なのよ」