ダンス素人の読者を引き込む戦略
――ダンサー同士の会話もリアルですよね。専門性の高い作品だと、説明役から「これは〇〇ということか!」みたいな合いの手が入りますが、『ワンダンス』にはそれがない。なのに、いつのまにかダンスやバトルの見どころや楽しみ方がわかると言いますか。
珈琲 最初の1、2巻ぐらいまでは説明したほうがいいのかなと思っていましたが、マンガというより教科書みたいになってくるので、それはやめようと。読者の中には特にダンスのことが好きじゃない人もいるわけで、その人達に読んでもらうために、共感も大切にしました。例えば、ダンサーを超人のように描くと、読む方も入っていけないじゃないですか。ダンサーも家でご飯を食べて、家でトイレして、夜寝ているので、そういった生身の部分を描くようにして。
――1巻の見開きのインパクトもすごかったです。「この作品は長く続きます」という決意表明のようにも感じました。
珈琲 最初の頃は、「これを人生最後の作品にしよう」ぐらいの感じでやっていたので。だけど、あれだけキャラクターを作ったのに実際にしゃべるキャラクターはあの半分も出てきていないし、今は何か他の題材も描いてみたいと思ったりしています。
――長く続けて欲しい半面、違うジャンルの作品を読んでみたい気もします。ところで、連載序盤の集団ダンスからバトル形式に進んで、一段とギアがあがりましたよね。
珈琲 僕自身がソロでフリーで踊っていたので、それが一番楽しいと思っているんです。だけど、「ダンス」と聞くと振り付けのある集団ダンスを思い浮かべる人が多いじゃないですか。だから、最初は集団ダンスから入って、意識的にバトル文化との対立構造にもっていったんです。