リアルなダンサーの姿を描く
――『ワンダンス』は、一凛高校ダンス部1年の小谷花木(カボ)と湾田光莉(ワンダ)のダブル主人公ですが、ご自身がダンス経験者ということで、カボと重なる部分はありますか?
珈琲 カボ君はまわりからいじられても、その場を和ませるような返しをしてきためちゃくちゃ包容力がある人。ですから、人と接する時の僕とは全然違います。ただ、吃音は自分の経験を描いているので、重ねている部分もあります。あくまで僕の症状でしかないので、「共感してもらえるのかな?」という思いはありました。でも、実際に描いてみたら、吃音症の人から「すごいわかる」「勇気をもらいました」とか、まわりに吃音症の人がいるという方から、「このマンガのおかげで向き合い方がわかりました」ってDMが来て、よかったなと。
――前向きになれる作品ですもんね。自分の気持ちを表現するのが苦手だったカボが、少しずつ自分を表現できるようになっていく過程にグッときますし、カボとワンダの恋模様も気になります。とはいえ、恋愛ありきではないというか。
珈琲 カボ君がワンダさんのことをすげえ好きだと思うときもあれば、ダンサーとして本気でリスペクトしていたら、恋愛どころじゃなくなるんじゃないかという思いもあって。
――本作は成長物語でもあるわけですが、先々の展開まで編集さんと打ち合わせをなさっているんですか?
珈琲 あまり打ち合わせをしない方だと思います。基本的にまず僕がプロットを送って、編集者ふたりが話し合って返事をくれて、それを受けて微調整してって感じですね。最初の大元のままいくことが多いです。
『ワンダンス』担当編集・ジュール氏 「こうしてほしい」とかではなく、「次はこれが見たい」といった伝え方をすることが多いですね。
珈琲 ストリートダンス文化って、思いっきり中指を立てたり、相手の身体的特徴をストレートに言う側面があるじゃないですか。そこで、「この表現だと嫌がる読者がいるかも」と指摘してもらうことも。どこまで避けるのか難しい部分ではありますが、よかったなと思うこともあるんです。
ダンスが題材の邦画やドラマって、ダンサーが日常でも高圧的に描かれていたりするんですが、実際のダンサーは優しくて、自信がなかったりする人も多い。編集者のおかげで、そこはリアルに描けているんじゃないかと思います。