2020年の総理退任後、60年ぶりのピアノに挑戦

午後2時15分、葬儀副委員長の松野博一官房長官が開会の辞を述べた。

「ただいまより、故安倍晋三国葬儀を執り行います」

続いて、君が代が演奏され、その後、約一分間の黙が捧げられた。 
黙祷ののちに、安倍の政治家としての歩みをまとめた映像が流された。会場に設置された大型モニターには「内閣総理大臣 安倍晋三 憲政史上最長の3188日」とのタイトルが浮かび上がった。 

冒頭、「2020年の総理退任後 60年ぶりのピアノに挑戦 震災復興への強い思いを胸に 自宅で練習を重ねた」との字幕とともに、東日本大震災の復興支援ソング「花は咲く」をピアノで弾く安倍の姿が映し出された。 

ピアノの音色に合わせて、アベノミクスの宣言や、安倍が人気キャラクターのマリオに扮したリオデジャネイロ五輪の閉会式、国会での演説や記者会見、東日本大震災の被災地を訪問する姿、日本の総理大臣として初めてアメリカ議会上下両院合同会議で演説した様子、外遊の写真や映像が多く流れた。 

約8分間の映像の最後は、冒頭の安倍のピアノ演奏の映像に戻り、安倍が笑顔で「もう一回行きます?」と語る姿で締め括られ、会場は大きな拍手に包まれた。 

安倍洋子「晋三の性格は父親、政策は祖父の岸信介だった」…国葬儀の式壇に置かれた安倍晋三の議員バッジともう一つのバッジ_2

菅の弔辞を聞き、昭恵は涙を浮かべた

午後2時30分、葬儀委員長を務める岸田文雄総理が追悼の辞を述べた。

岸田に続いて、三権の長である細田博之衆議院議長、尾辻秀久参議院議長、戸倉三郎最高裁判所長官が、そして友人代表として菅義偉前総理が弔辞に臨んだ。 

官邸で苦楽を共にした日々を振り返る菅の弔辞を聞き、昭恵は涙を浮かべた。目頭を押さえる参列者も多く見られ、会場からは自然と大きな拍手が起こった。葬儀では異例のことだった。 

参列者の献花が長く続き、国葬が終わったのは予定より約一時間遅い午後6時15分過ぎだった。

「花は咲く」が再び奏でられ、敬礼する自衛隊員らに見送られるなかで、遺骨は兄の寛信に抱きかかえられながら、日本武道館を後にした。