安倍晋三は「愛人を作らない」「浮気しない」稀有な政治家
政治家の妻はいいところの出の女性だったり、はたまた政略結婚だったりが少なくない。安心感がある一方で男としては退屈な面がある。そのため、刺激を求めて浮気をしたり、愛人を作ったりする政治家は枚挙に遑がない。田中角栄の愛人だった佐藤昭子がいい例だろう。
そうやって”バランス”を保っているのだ。メディアも油断ならないし、コンプライアンスが高まっている昨今は愛人を作るような政治家も減り、ある意味で大変であろうと思う。
その点でいえば、安倍晋三という政治家は愛人を作ったり、浮気をしたりすることが全くなかった稀有な人物だった。それは安倍昭恵という妻が、安倍に安心感を与えると同時に刺激も与えるような存在だったからだ。
刺激の一例を言えば、安倍が一回目の総理大臣を辞任した後、昭恵が立教大学の大学院に入ったことだ。立教は左翼の強い大学で、教授も左翼系が少なくない。これまでは右寄りの安倍の言うことを聞いて、それが当たり前だったのに、立教で左翼教授の話を聞くことで、「この人たちの言っていることにも理がある」と知る。ここからがおもしろいのだが、昭恵はたとえば反原発派など安倍の政策に反対する人たちを、安倍に会わせて話を聞かせるようになる。
昭恵は安倍が会えない人に会い、行かれないような所を回った
月刊『日本』などで書いている文芸評論家の山崎行太郎は安倍批判をよく書いていたが、ある時、どう調べたのか昭恵から連絡があって驚いたという。
「ぜひもっと話を聞かせてほしい」と言われて二度ほど会った。安倍の敵であろうと、「批判をするのは何かしら意味や理由があってのことに違いない、それを聞こう」という考えなのである。この感性、そして実際に会う行動力は目を見張るものがある。山崎もそれには感激していた。
安倍は安倍で昭恵に紹介された人間ならば、避けずに話を聞く。そうすることで、安倍自身も様々な意見を耳にする機会を得られ、感性が細ることを防げる。
私が安倍昭恵という人物に注目したのも、こういったことをする政治家の妻はこれまでにいなかったからだ。
安倍は政治家として、首相として制約があり、会える人も行ける場も限られてくるから、昭恵はなるべく安倍が会えない人に会い、行かれないような所を実際に自分の足で回った。