スイスはペーパーカンパニー設立に最も多く関与した国の1つ
『パナマ文書』は2016年に公開された。筆者はこのペーパーバックをロンドンの書店で購入したが、タックスヘイヴンに設立された法人に関する機密ファイルだった。
『パナマ文書』によると、スイスはペーパーカンパニー設立に最も多く関与した国の1つだった。翌年に明るみに出た『パラダイス文書』でもスイスの大物政治家や企業経営者、大企業の名前が関係者として挙がった。
ロシアのプーチン大統領の名前はなかったが、彼の3人の友人の名前が挙がった。中国の習近平総書記の義兄、同李鵬元首相の娘、英国・キャメロン元首相の亡父、マレーシアのナジブ・ラザク首相の息子、アゼルバイジャンのアリエフ前大統領の子供達、カザフスタンのナザルバエフ前大統領の孫、パキスタンのシャリーフ元首相の子供、南アフリカのズマ大統領の甥、モロッコのムハンマド6世国王の秘書、韓国の盧泰愚元大統領の息子や、俳優のジャッキー・チェンら有名人の名前もあった。
パナマの新聞『エル・シグロ』は、ジャッキー・チェンが英国領ヴァージン諸島に登記された6つのダミー会社の株主になっていると報じた。
2017年に暴露された『パラダイス文書』は漏洩案件が1340万件もあり、調査に時間がかかった。顧客の企業や個人数を国別に分けると、米国が3万余、次いでイギリス1万4000余だった。
タックスヘイヴン関連文書にゼレンスキー大統領の名前も
ついで『パンドラ文書』の発覚は2021年10月だった。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、リークされた機密書類の概要を暴露したので、銀行と組んだスイスの弁護士、会計士、コンサルタントらが富裕層や権力者の資産を世界各地に移動させる手助けをしていた事実が浮かんだ。
分析の結果、91ヶ国の330人以上の政治家や政府高官にタックスヘイヴンとのつながりが確認された。ブレア元イギリス首相、アブドラ2世ヨルダン国王、ウクライナ大統領のゼレンスキーの名前も報道された。「正義の大統領」=ゼレンスキーの名前があるのだ。
また、詐欺や贈収賄や人権侵害等の不正行為で告発された人物や企業が隠れ資産を所有していた事実も明るみにでた。
スイスの銀行法第47条は、たとえ違法行為を公開する目的であっても、個人の口座情報を他人に公開した場合は刑事罰に問われると規定している。しかしスイスの法律の壁は壊れた。大富豪たちはスイス口座を畳みはじめ、世界のオフショア、とりわけドバイ、リヒテンシュタイン、ケイマンなどへ巨額を移動した。