SDGsと声高に叫んでいるが
自然との共存はまだまだ遠い 

一方、カエルの鳴き声以外にも近隣住民から苦情を受けるケースが多々あるという。千葉県松戸市の米農家Sさんが言う。

「田んぼに水を入れて耕すためにトラクターを動かしていたんですが、それが朝6、7時ごろだったから、母親2人組に『ねぇ、うるさいでしょ! 今何時だと思ってるんです?』とすごく怒られて……。
それで、朝の数時間を遅らせたら、丸一日耕さないと間に合わなくなり、作業工程にも遅れが出るようになりました。近所の人には農家の仕事に理解を持ってほしいですね……」

近隣住民からの苦情は音にだけとは限らない。周辺の景観を理由にこんな無茶を言う住民もいたと証言するのは、神奈川県横浜市の米農家Yさんだ。

「近隣住民から『田んぼの畔の草が邪魔で景観が乱れるからどうにかしてくれ』と言われたことがあります。畔には稲作に不可欠な生き物がたくさん住んでいるというのに……。

ご近所トラブルは避けたいから5センチくらいに揃えていますが、あまり短く刈りすぎると生態系が崩れてしまいます」 

子どもたちが楽しく田植え体験をする様子(※写真はイメージです) 
子どもたちが楽しく田植え体験をする様子(※写真はイメージです) 

静岡県内で自然教育をしている某NPO法人の理事も今回のカエル騒動に肩を落とす。

「ウチでは近所の湧き水を使った自然農法による田んぼで、子どもたちに田植えや草刈り、稲刈りを経験させて自然や食を学んでもらう活動してきました。
ですが、ご近所さんから『子供の声がうるさい』とか、無農薬なので雑草が近所の敷地や畑にまで広がったために『農薬を使うか田んぼをやめるかしてくれ』とかなりの苦情を言われました。

当初は頻繁に雑草を刈っていましたが、理解を得られず5年前に田んぼをやめてしまいました。最近では企業や学校でSDGsと声高々にあげていますが、自然との共存はまだまだ難しいですね」