「雇用を1200万人増やした。トランプ氏の弁護士らの分も含めてだ」

時事ネタを取り入れたジョークは往々にして攻撃的になりがちだ。この夜、バイデン大統領もトランプ氏をターゲットとした時事ネタ毒舌ジョークを連発した。そのいくつかを紹介しよう。

「(この後にスピーチする芸人のウッド氏に)10ドル払うから今夜のスピーチを短くするよう頼まれた。大統領に口止め料を渡すとは、トランプの逆張りだよ」

「(バイデン政権になって)雇用を1200万人増やした。トランプ氏の弁護士らの分も含めてだ」

現在、トランプ氏は不倫関係にあったポルノ女優に高額の口止め料を渡した件で、ニューヨーク検察から起訴されている。この口止め料のために大勢の弁護士を雇うはめになったトランプ前大統領をチクリと刺してみせたというわけだ。

あなたはどこまで笑える? バイデン大統領の「ジョークの実力」とすべらないアメリカンジョークの「鉄則」_3
4月に「不倫口止め」など34の罪でニューヨーク地検に起訴されたトランプ前大統領氏

毒舌のホコ先はライバル共和党支持者や同党の大統領選有力候補デサンティス・フロリダ州知事にも向けられた。

「デサンティスがらみのジョークはたくさん用意したんだが、ミッキーが先に叩いちゃったんで出遅れちゃったよ」(解説:LGBTなど性的少数者に寛容なディズニーリゾートを締め上げることで保守層を取り込もうとするデサンティス知事に、ディズニー側が訴訟で応戦するなど、猛反撃している)

「フロリダ州知事に再選されたデサンティス氏が『有権者の信任(mandate)を得たか?』と聞かれ、『んなわけないだろ。俺はゲイじゃない!』と言ったとさ」(解説:同性愛者を目の敵にするデサンティス知事が意識過剰のあまり、信任を意味するマンデートという単語を男とのデートと早合点してしまった、というジョーク)

「まあ、今晩は楽しくやりましょう。ジョークに当惑したり、気が変になったと思ったら、あなたは酒の飲みすぎか、マジョリー・テイラー・グリーンに違いない」(解説:学校での銃乱射事件を陰謀と主張するなど、数々の狼藉で議会除名の動きもあった極右トランプ主義者の下院議員をあてこすっている)

「イーロン・マスク氏はNPR(リベラル系の公共ラジオ)が嫌いなようで、予算を減らせとツィートした。わたしに言わせれば、NPRをつぶす最良の方法は彼がNPRを買収することだ」(マスク氏がツィッター社を買収してから同社の評判、業績が低迷していることを皮肉ったもの)

バイデン大統領が晩餐会でジョークを披露するのは昨年に続いて2度目だが、前年に比べると攻撃的なジョークの割合が格段に増えた印象だ。晩餐会直前にバイデン大統領は次期大統領選への立候補を正式表明している。4月30日の晩餐会出席も出馬宣言後の遊説のひとつと考えれば、ジョークがライバル攻撃色の強いものになったのは仕方のないことなのかもしれない。